9
「この年であんなのに乗せられるとはな………」
回転木馬を降りて、シンは不満ありありと愚痴る。
そりゃわたしだってあんなメルヘンものにはできれば乗りたくないし、
乗ったら『左舷弾幕薄いぞ! 何やってんの!?』の一言も言いたい、言いたいけど普通の女の子はそんなこと言わない
中々に女の子になるのは大変だ
「どうする?」
しかもこんなに慣れないことをしているというのに、相手の方は動揺の気配すら見せてくれないから、
『俺涙目』という表現じゃとてもじゃないけど足りない
ていうか普通にヤバイ。シンにアピールするどころか、変な奴としか思われてない雰囲気がぷんぷんにしてくる。
「どうする?」
一向に答えないわたしにシンが再び質問してくる。
これほどまでにシンが尋ねてくるのには理由がある。
時間はまだ夕方、日は落ちていない
しかしそこはさすが小さな遊園地、残っている乗り物はもはや一つだけ
その乗り物とは
観覧車
デートスポットとして最もベタで効果的な乗り物。
しかし残念なことにその効果の発動条件が『恋人同士』というのに限定されており、わたしとシンは仲が良いけど恋人同士ではない
かといって『じゃあ帰ろうか』という選択肢はないわけで
「どうせだし、乗って帰ろっか?」
「別にお前がそう思ったんならいいんじゃないか?」
シンの素っ気無い返事は、わたしがいかに今日一日フラグを取り損ねてきたかが分かるには十分過ぎるものだった。