10


 がこん



 観覧車がゆっくりと動き始める。

 徐々に町が小さくなっていく、それ自体は特に見慣れた光景。

 こなたと2人だけの空間、これもまた見慣れた光景。



「おおー高い高い…じゃなくて、うわぁー高―い」

 だけどこなたは見慣れない姿、薄幸の美少女を演じている。

 ここまでくると、いかにこなたが怒っているということがオレでも分かる。

「こなた」

 弱みを見せたらいけないと思っていたものの、ここまで続けられるとそんなことはどうでもよくなりつつあった。

 こなたからしたら今まで一緒に馬鹿してたのに、いきなり受験勉強とか言い出したのならそれは怒って当然だろう

 怒って当然、でも



「どうしたの、シン?」

 こんなこなたは嫌だ、なんか違う



「……いい加減にしてくれ」

「えっ?」



 確かにちょっとドキッともした



「もうやめてくれ」



 でも違う

 オレの知ってるこなたとは



「勘弁してくれ!

 もうそんなのはやめてくれ!」

 密室な空間は思った以上にオレの声を反響させる。



「……どうして?」

 今まで放っておいた、そんな身勝手なオレにこなたは怒りを隠し切れない様だった。

 瞳を帽子の下に隠しそう聞いてくる。

 それはオレを怯ませるには十分な動きだった。

 でもオレは引くわけにはいかなかった



「私には似合ってないから?」

 震えるこなたの声。怒ってるはずなのに、なぜかこなたの姿が小さく見えた。





戻る   別の日常を見る   進める