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お兄ちゃんの背中に引っ付いてバイクに揺られること三〇分。無事に目的の丘に到着しました。
「まだちょっと時間あるな」
お兄ちゃんは時刻を確認すると、テキパキとテントを貼っていきます。
その様子はテレビでみたサバイバルのプロという感じです。
って感心してる場合じゃないです。
「お兄ちゃん手伝うことないかな?」
「ああいいって、やるから」
顔を向けることなくテントを貼っていくお兄ちゃん。
ううっ、完全に足手まとい扱い、じゃなくて足手まとい。
でもそうなんです、こういう状況だとわたしは何をどういう風にしたらいいのか全く分からないのです
「ゆたか出来たからテントの中に入ってたらいいぞ」
次はお兄ちゃんはバラバラになってる天体望遠鏡を組み立てていきます。
もちろんわたしにはそんなこともできません。
気落ちしたままテントの中に入ります。
お兄ちゃんはこなたお姉ちゃんと同じく、色んなことができます。勉強も運動も。
最初はそれがただ凄いなって尊敬しているだけでした。
でもだんだんそれが、悔しくなってきたんです。
これだけ色々してもらってるのに、お兄ちゃんに何もしてあげられない自分に。
お兄ちゃんはわたしよりも年上で何でも出来る、っというのは分かっているつもりです。
でもきっと何かできるはずなのに、全くできないんです。
お兄ちゃんが時々苦しんでることは知っているのに、こなたお姉ちゃんや先輩たちみたいにはできないのです。
「ゆたかどうした?」
望遠鏡が組み立て終わったんでしょうか、テントに入ってきたお兄ちゃんが驚いた顔でわたしに駆け寄ってきます。
「寒いのか?」
「……ううん、違うよ」
「じゃあ気持ち悪いのか」
その問いにもわたしは首を横に振ります。
困惑した顔のお兄ちゃん。
優しいお兄ちゃんを困らせて
やっぱりわたしは甘えてる
小さい時にお姉ちゃんにした時みたいに
みなみちゃんの時みたいに
「お兄ちゃん」
でも
わたしはあの時のわたしじゃない!
「わたしのことどう思っていますか?」