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ガチャ
30秒後、オレはヘルメットにライダースーツという、家の中では明らかにおかしい格好をして部屋を出てきた。
めざすはもちろん―――
「ちょ、ちょっと、シン!? きみバイトっしょ!?」
そうこなたの言うとおりオレは今日バイト、しかも男のフロアスタッフの日なのでガッツリと日付が変わるまである。
「大丈夫だ、問題ない」
オレはこなたに親指を上げてみせる。あっちからは表情がヘルメットに隠れてはいるが、オレは今最高にいい顔をして見せる。
「いやいやいやいやいや、無理だし!
みなみちゃん家都内だよ!? 埼玉→東京→埼玉なんて三十分以内に絶対無理だって!!」
「そんな答えは聞くもんかぁぁ!」
オレの咆哮にこなたがビクッと体を震わせる。
まったく、女というのは分かってない
男には無理だと分かっててもやらなきゃならないことがあるんだ
それに
ポン
こなたの頭に手を乗せる、手袋越しでも暖かさは伝わってくる。
今のオレは1人じゃない
「上手く言っといてくれ」
「えぇぇぇぇー!?」
オレはそれだけをこなたに託すと、北風が吹きすさぶ外へと出て行った。