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「……そうかもしれません」
あまりの正直な発言にオレは一瞬呆気に取られる。
そしてその間にも小早川ゆたかは言葉を続ける。
「わたしを見て妹さんを思い出すんでしたら、わたしはこの家に来ない方がいい、ですよね?」
思わず頷きそうになるのを堪える。
さすがにそんな事をオレの今の立場で言えるわけがないし、そもそもそれがなんの解決にもなっていない事だって事は分かってる。
「わたし、アスカさんならつらい過去を乗り越えれると思うんです!
わたしでもお姉ちゃんのお陰で乗り越えれたから………」
ああ、この子もこの子なりに大変だったんだな
小早川ゆたかの目を見たら分かる。
過去に何か辛い事があったんだって事が
全てを捨ててして逃げ出したいって事が
「す、すみません! わたしが言いたかったのはこれだけです!」
「お、おい!?」
「そ、それじゃあ、お休みなさい!」
引き止める間もなく、文字通り脱兎の如く部屋から出て行く小早川ゆたか。
「ああいうところはゆいさんの妹だな」
開けっ放しにされたドアを閉めつつ、オレは苦笑する。
「情けないな」
オレは携帯に写ってる妹に話しかける。
年下の相手に励まされるとは、全くスーパーエースの称号が泣くってもんだ。
確かに今のオレは元の世界にいた時みたいななんでも出来る力はない。
それどころか、他人に迷惑を掛けてる事が増えた。
ただ
やられぱっなしで終わりたくはない
「そうだよな?」
オレは答えない相手に笑って問いかけた。