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「お世話になりました!」
「ゆきによろしくな」
おじさんとお姉ちゃんが玄関まで送ってくれます。
昨日は恥ずかしかったなー、勢いに任せて変なこと口走しちゃったし………
やはりわたしの無責任な言葉に怒ったのでしょうか、アスカさんは朝ご飯の時も姿を見せませんでした。
「ゆーちゃん、また来なよ」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん!」
昨夜のことは誰にも話していません。
もし言ってしまったら、こなたお姉ちゃんとアスカさんが大喧嘩しそうな気がするので…わたしの為に家族で喧嘩はしてほしくありません。
「本当にありがとうございましたー」
バス停まで送るというお二人の言葉を丁寧に断ってわたしは泉家に別れを告げます。
また来れる日が来るのかな
おじさんやこなたお姉ちゃんと暮らせないのは残念だけど、家からでも通えないことはないし、
いざとなったら一人暮らしを提案してみようと思います。
わたしは自分がいかに甘えてたということが、アスカさんを見て分かりました。
「よーしがんばるぞー!!」
「何をだよ?」
「うわっ!?」
び、びっくりした〜!
道路に出て叫んだわたしに突っ込みを入れたのは、アスカさんでした。
「な、なんでこんなところに?」
「なんだよ? 愛車のメンテを家の前でしたらいけないのかよ?」
相変わらずの少し怖い顔でアスカさんはわたしの問いに答えます。
言われた通り、すぐそばには大きなバイクと工具箱がありました。
「あ、あの〜き、昨日は―――」
「家まで送ってやろう、って言いたいところだけどオレ免許取立てだからさ、2人乗りするとゆいさんに怒られるんだよな。
面倒臭い規則だよな」
わたしの言葉を遮ってアスカさんは肩をすくめながら言葉を次々と出していきます。
「だからさ」
「はい?」
「2人乗りが出来るようになったら、練習も兼ねて後ろに乗ってくれないか? その頃にはいるんだろ? ここにさ」
「…………」
アスカさんの言葉にわたしは言葉を返すことが出来ませんでした。
それは一瞬意味が分からなかったからです。そして頭の中でなんども繰り返し、繰り返し
「あっ! は、はい!」
ようやく意味が分かりました
「来ないなんて言うなよ。ここはもう一つの家族なんだろ?」
「はい!」
わたしはこの時、初めてアスカさんの笑顔を見ました
〜 f i n 〜