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こなたと共にリビングに顔を出した、小早川ゆたかは別段顔色が冴えない様には見えなかった。
これなら安心だろう。しかし暑さで参ってたからっていきなり人の顔を見て倒れるとは失礼なヤツだ。
そこらへんは似てないとはいえ、ゆいさんの妹、ということか。
「もう大丈夫なのか?」
「は、はい…あ、あの〜」
「シンだ、アスカ・シン。
ちょっと待ってろ。もう出来上がるから」
自己紹介もそこそこにオレは鍋へと視線を移す。
「は〜い、ゆーちゃん行こ」
小早川ゆたかの手を引っ張りソファーへと向うこなた。
でも今のこなたはいつもと違って、人に対する気遣いみたいなのを感じるのはオレの気のせいなのか?
結論から先にいうと、それはオレの気のせいでもなんでもなかった。
「ゆーちゃん、大丈夫? 具材大きくない? 熱くない?」
「うん、大丈夫! ちょうどいいよ」
改めて自己紹介を済ましてからの晩御飯。
この様にこなたはさっきからご飯中ずっと、小早川ゆたかに気を回している。
最初は何か打算があっての事と思っていたけど、小早川ゆたかの視線を見てその考えは吹っ飛んだ。
その瞳に映るのは尊敬と親愛の眼差し。
ここまでの眼差しを受けるのはこなたが今までに相応の信頼を勝ち得たのだろう。
こなたの性格上、打算があってもそこまで面倒な事はしない。
とすれば、本当に小早川ゆたかの事をまるで本物の―――
「どうしたのシン、さっきから黙っちゃって?」
「いや、お前達二人仲良いなって思ってさ」
そんな気はなかったんだが、口から出た言葉の中に皮肉が入り込む。
「まあ、元々ずっと前から交流はあったからね〜」
「そうなんですよ、わたしはここに住んでるってわけじゃないですけど、ここはわたしのもう一つ家族みたいなところです」
「ゆーちゃん、嬉しい事言ってくれるねーおじさん泣いちゃうよ」
「じゃあ、ゆーちゃんはわたしの妹だねー」
「あはは、こなたお姉ちゃんはもうお姉ちゃんだよー」
ほがらかに笑う小早川ゆたか、その頭に手を乗せて撫でるこなた、そしてそれを見つめるそうじろうさん。
母親こそいないけど、見るからに温かな家族
「ごちそうさま」
オレはその場に全くそぐわない声で冷たく言うと、あっけにとられてる3人を尻目に部屋へと戻っていく。
ただオレはそれを正視したくはなかった
昔を思い出すから
あの時も一瞬、思い出してしまった
倒れるのを防ぐために受け止めた時
『ありがとうお兄ちゃん!』
小さな体、でもそれでも生きてるという証拠のぬくもり
もう2度と味わえない感触を