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バスから見る景色が懐かしく思えます。まるで映画の一シーンみたいです。
実際におじさんの家に行くのは久しぶりなんです。
そして早く会いたいです、優しいおじさんとこなたお姉ちゃんに。
バスから降りるとわたしは迷うことなく歩を泉家へと進めます。
何度も行ったことがあるから、わたしでも迷う心配はないです。
「う〜近いはずなのに………」
歩いてすぐにわたしは息がもう上がってしまいました。
電話して迎えに来てもらおう
と思いわたしは携帯電話を手に取り、鞄にしまいます。
これくらいは一人で歩けないと………、上手く志望校に合格できれば、
来年から泉家でお世話になるんだから、自分のことは自分でちゃんとしないと………。
でも不安はありません。
そこにはおじさんもこなたお姉ちゃんもいます。
二人とももわたしの大好きな家族ですから。
「着いた〜」
バス停からここまで来るだけで、もう疲れています。こんな自分の体質がすごく嫌です。
泉家に住むようになったら二人に迷惑を掛けないようにしたいです。
ぴーんぽーん♪
そんな思いをしながら、わたしはインターホンを押しました。
『はい?』
「あの〜ゆ、ゆたかです」
『ああ』
あれ? おじさんってこんな声だった? 少し高い気が………。
ガチャ
「えっ?」
わたしはドアが開けられると、固まってしまいました。
そこから出てきたのはわたしが知ってるおじさんでも、こなたお姉ちゃんでもなかったからです。
「お前、さっきゆたかって言ったよな?」
目の前の男の人がわたしを睨んできます。
こんなにも怖い目をした人をわたし見たことがないです。
それに纏ってる雰囲気もわたしが今まで感じたことがないものでした。
「え、あ、う、い、お………」
わたしはその人に圧倒されて、何もしゃべれる状態ではありませんでした。
ここは泉家? わたし間違えちゃった?
それともこの人は強盗? わたしどうなっちゃうの?
様々な考えがわたしの頭の中を駆け巡ります。でも結論は出ませんでした。
なぜならわたしの意識がぼーっとしてきたからです。
これが暑さからくるものなのか、考えすぎたかは分かりません。
分かっているのはこういう時はだいたい倒れる前兆だということだけです。
「はぅっ!」
「お、おい!?」
薄れゆく意識の中で見知らぬ男の人の驚く声だけが耳に入ってきました。