「ああ、いたいた。ん? こなたは?」

「買い物に行きましたけど…どうかしたんですか?」

「んー実はさっき編集社から電話が来てな。急遽打ち合わせで今から出なきゃならないんだ」

「それは不味いですね………」

 別に頭を抱えてるのはオレが1人で留守番が出来ないからというわけではない。

 今日はこの家に来客が来る予定なのだ。

「ああ、ゆきの家に電話したんだけど、生憎もう出てしまったらしくてな………」

 ゆきというのはそうじろうさんの妹で今は結婚しているが、わりと近くに住んでいるらしい。

「まあ、こなたもしばらくしたら帰ってきますから、それまではなんとかしておきますよ」

 溜め息と共にしぶしぶオレは提案する。

 気が重いのは今日来るのがゆいさんの妹だという事だ。



 成美ゆい、そうじろうさんの姪でこなたにとっては従姉にあたる。

 ゆいさんとは何度か会った事があるけど、オレはどうにもあの人が苦手だ。

 あのテンションの高さとノリの為にオレはペースを乱される。

 大体そうじろうさんを始めとして、この一族はどうも人のペースをかき乱す遺伝子がコーディネートされてるとしか思えない。

 そんな一族の、しかもゆいさんの妹となればオレの気が重くなるのも理解してもらえると思う。



「そうかい? じゃあ頼めるかな?」

「はい」

 だけどここではオレは居候の身、それにそうじろうさんには何かと世話になってるし、ここでオレが拒否するという選択肢はとれない。



「それで、その子の名前はなんて言うんでしったけ?」

 今まで自分に関係ないと思ってこなたの説明を聞き流していたけど、そうも言ってられない状況だ。

 さすがに名前も知らないのは色々とマズい。

「そういえば、まだ教えてなかったけ」

 そうじろうさんはそんなオレのそんなやる気のない態度を知ってるはずなのに、特に咎める事もせずにとぼける。

 格好良い大人ってこんなんなんだろうな。

 そしてまるで実の子供を見る様にオレに笑いかけながら教えてくれる。



「小早川ゆたかっていうんだ」



『First contact』 〜ゆたか編〜







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