うだるような夏の暑さとセミの声が、部屋全体に広がっている

「これ以上〜♪」

 だがそんな環境をものともせず、オレは鼻歌を口ずさんでいた。

 こんなに機嫌が良いのはこの世界にきて、数ヶ月で初めての事かもしれない。



 理由はこの夏の暑さがオレに小さな感動を覚えていたからだった。

 確かにオレのいた世界でもプラントのコロニーは別として四季は存在していた。

 だけどこの暑さはオレが今までに体験した事がない、自然を感じるものだった。

 こういうのを感じて機嫌が悪いヤツなんてそうそういない。もちろんオレだってそれは例外じゃない。

 そしてなんといってもこの暑さのお陰でオレはいつも負けている、買い出しを賭けたゲームにこなたに勝ったんだから。



「くくっ」

 今思い出しても笑ってしまう。あの時のこなたの悔しそうな顔。

 本人は暑さのせいで負けたと言ってきたが、そんなのはただの言い訳でしかない。



 負けは負けだという事をオレはよく知ってるし、ベストな状態を出せない方が悪い



 それを言うとこなたは

『お前が言うな!』と遠吠えを吐いて、泣きながらこの炎天下の外に出て行った。

 あの泣きが悔し泣きか、怒り泣きかは分からないけど、気分が良いという事は事実だ。

 恐らくこの暑さではこなたはしばらく帰ってこれないだろう。これで久々に静かな時間を堪能できる。



 がちゃ



 そう思って何をしようかと考えている時に、この家の家主がリビングに姿を現した。





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