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「それじゃあ、出かけてくるから、留守番頼んだよ」
「……はい」
硬い表情でオレはそうじろうさんを見送る。
こなたもゆたかもパティも朝早くに学校に向かい、これで泉家にいるのはオレ1人になる。
「すみません、オレのせいで………」
「心の傷なんてそう簡単に治らないさ。
ましてや家族を亡くした傷なんて、一生治らないからな」
それだけ言って、最愛の人を亡くしたそうじろうさんは出かけていった。
その顔はとても優しいものだった。
オレもいつかあんな風になれるのか? 過去を乗り越え、大切な人を傷つけずにすむ事が。
オレは真っ直ぐに自分の部屋へと戻る。
正直言って何もやる気が起きない。
少なくとも今のオレには全く不可能な事だ。
♪ ピーンポーン♪
誰もいない家にはインターホンの音もよく響く。
だがオレは全く反応を示さなかった。
♪ ピーンポーン♪
こんな顔のやつが出てきたら、あっちに迷惑だろ
等と都合のいい理由を付けているが、要するに面倒臭いのだ、今は人に会うのが。
♪ ピーンポーン♪
オレの中で憎悪が駆け巡ってる、今、誰かに会えばそれを吐き出してしまう。
別に問題を被るのがオレ一人なら、問題はない。
だけど今のオレは泉家の一員、その泉家に迷惑を掛ける事だけは避けないといけない。
そして何より、オレが問題を起こせば、泣いてしまうやつがいるから
♪ ピーンポーン♪
「いい加減にしろよ!!!」
元来気の長いほうじゃない上に、今日という日だ。
オレの忍耐等ないに等しい。
恨むなら、自分のしつこさを恨むんだな
「アンタ、少しは迷惑を考えたら―――」
乱暴にドアを開ける、が言葉は途中で止まる。
インターホンをしつこく押してる犯人はオレが全く予想していなかった人物だからだ。
「あっ、おはよ〜シンちゃん」
そしてその犯人は笑顔でそう言いやがった。