「シンちゃん、シンちゃん、この服どうかな?」

「ああ、似合う、似合う つかさお姉ちゃん」

「ほんと!? じゃあね―――」

 最初こそ、『彼女』を『姉』呼ばわりさせられるという高度なプレイに愕然とさせられたけど、慣れてみればどうってことはない。

 それどころか逆に、難解な服の感想も取りあえず『姉』呼ばわりしとけば勝手に満足してくれるしな。



「シンちゃん、これは!?」

「うん似合うぞ、つかさお姉ちゃん」

「えへへ」

 その上、つかさの照れる顔を堪能できるんだから文句はない。



「じゃあ全部買っちゃお〜」

「待て、落ち着けつかさ」

 舞い上がってるつかさの襟首を、ひょいと摘んでレジへ向かう足を止める。

「へっ?」

 いつも通りに呼んで、ふりむいたつかさの顔はいつもの知ってるもの。

 気分はなんか催眠術師になったみたいだ。



 でも気に入らないのが1つ。



「シンちゃん次はどうしよう、どこ行く?」

「じゃあお姉ちゃん、アイスでも食べるか?」

「はう〜」

 返事かどうか困るような声を上げて恍惚な表情になるつかさ。



 でもさ、この顔『彼氏』の時のオレには見せてくれないよな?

 この顔はあくまで『下の姉弟』に見せる顔。

 嫉妬するにしてもどうしようもなさ過ぎるけど、やっぱりおもしろくない。



「シンちゃ〜ん、早く早く」

「ああ、分かってるってつかさお姉ちゃん」

 でもつかさが嬉しそうにしてるから、今日くらいはな

 つかさが側にいる、それだけでもオレは充分だ。





戻る   別の日常を見る   進める