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「うーん」
「わ、わたしの作ったシュークリーム美味しくなかった………?」
「え、いや、そういう訳じゃないんだ。なんで同じ作り方でこうも味が違うんだろ、と思ってさ」
あの後2、3日かけてつかさに作り方のコツを教えてもらい、何度かつかさ指導の下作ってみたものの、
オレとつかさが作ったシュークリームは、ファーストシーズンとセカンドシーズンの機体性能差くらいの開きがあった。
クソッ! ホワイトデーは明日だってのに。
「分かった! 分かったよ! シンちゃん!」
つかさがオレのシュークリームを食べながら叫んだ。
「ホントか!? 何が足りないんだ!?」
「愛だよ!これには愛が足りないの!」
こなたみたいな事を言い出すつかさ。
「……つかさ、ごめんな。疲れてるなら言ってくれればいいのに………」
「違うの〜! 本当だもん!」
つかさの様子から、どうやら本気で言っているらしい。
「愛って言ってもな〜そんな形がないものどうやって入れるんだよ?」
「入れるんじゃないよ、込めるの」
「込める? ……悪い、もうちょっと具体的に言ってくれないか?」
「えーっとね…うーんとね………」
オレの質問につかさは頭を捻って考え始めた。
「分かった! わたしの場合食べてもらう人の笑顔を浮かべながら作るの」
「それが愛を込めるって事か?」
「うん…多分………」
なるほど、漫画で似たようなことを言ってたけど、その時は嘘くさいと思っていたが、
料理の達人つかさが言うのだったら間違いないだろうけど………。
「って事は、オレは………」
「お姉ちゃん達の笑顔を思い浮かべながら、作ったらいいんだよ!」
「だよな………」
どうにも照れくさいけど、やるしかないよな。
「ってつかさ、そろそろ帰らないとマズくないか?」
気がつくと窓の外はすでに暗くなっていた。
「ほんとだー! ……でも………」
「こっからはオレ1人で大丈夫だから」
「あ…うん…それじゃあ帰るね………」
つかさは何故か寂しそうな顔をして、帰り支度を始める。
「つかさ」
なぜつかさを呼び止めたのかはわからない。ただつかさの顔を見るとオレは声を掛けずにはいられなかった。
「な、なに、シンちゃん?」
「つかさがいなかったら本当にヤバかった」
そう言ってオレは親指を立てて
「ありがとな。オレ頑張るからさ」
「……うん! でも無理はしないでね!」
つかさはさっきとは違い嬉しそうにキッチンを出て行った。
「さて、やるか」
つかさの足音が聞こえなくなってから、オレは作業を始めた。