10
こんこん
「つかさ、私。ちょっといい?」
ノックしたのはお姉ちゃん。ちなみにわたしは帰ってきて思い出した宿題の真っ最中………。
「うん、いいよ〜」
「ごめんね、ちょっと話があるんだけど………」
「な〜に?」
「あ、あ、あ、あのさ、あんた、最近シンとい、一緒に帰ってる…わよね?」
「う、うん」
いつものお姉ちゃんと違ってなかなか用件を言ってこない。どうしたんだろ?
「あんた達…本当は付き合ってるんじゃないの?」
「えぇぇぇぇぇー!? そ、そんなー違うよー!」
「じ、じゃあ、なんで、なんで二人だけで帰るの?」
「そ、それは………」
言えない。ここで言っちゃったら、あの人の頑張りが………。
「お願い、答えて」
「…………」
「……あんたがシンと付き合ってたとしても、私は姉として祝ってあげたいし、親友として喜んであげたい。
でも、このまま私やこなた、みゆきに黙ったまま付き合うんだったら…私は祝っても喜んでもあげられない………」
「お姉ちゃん………」
お姉ちゃんの目は少し潤んでいたけどとても真剣で、いい加減なことを言ってでごまかしたらいけないものだったの。
「わたしたちが最近、一緒に帰るのには…理由があるの」
わたしは考え考え、話し始める。
「……その理由ってなんなの?」
「今は、言えないの」
「つかさ――」
「でも! 明日になったら全部分かるよ! 絶対! わたしを信じて!!!」
「…………」
「…………」
わたしたちは自分と同じ色の瞳を見つめ合う。
「そうよね」
ちょっとの沈黙。先に声を出したのはお姉ちゃんだった。
「私がつかさにウソをつかないように、つかさが私にウソつかないわよね」
そう言うとお姉ちゃんは、バツが悪そうに、照れくさそうに、笑ったの。
「ねえ、お姉ちゃん」
「何?」
「もしね、もしシンちゃんと付き合うことになったら、わたし一番にお姉ちゃんに言うよ」
「私も。もし私がシンと付き合う事になったら、一番につかさに言うわ」
そして、わたしたちは笑いあったの。
「さて、私は部屋に戻るわ」
ひとしきり笑い終わって少しおしゃべりして(内容はヒミツだよ)からお姉ちゃんは立ち上がった。
「今日はごめんね。いろいろと」
「ううん、わたしがお姉ちゃんだったら、きっと似たようなことやってたと思うし」
「あんたに慰められるなんて、今日は姉妹逆転かしら?」
「あはは」
お姉ちゃんは大げさにお手上げしてからドアノブに手をかけた。
「おやすみなさい、つかさお姉ちゃん」
「え〜と…おやすみ、か、かがみちゃん」
ばたん
「は〜続きをやらないと………」
かがみちゃんが部屋に入った音を聞いて、わたしは宿題を再開したの。