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 こんこん



「つかさ、私。ちょっといい?」

 ノックしたのはお姉ちゃん。ちなみにわたしは帰ってきて思い出した宿題の真っ最中………。

「うん、いいよ〜」



「ごめんね、ちょっと話があるんだけど………」

「な〜に?」

「あ、あ、あ、あのさ、あんた、最近シンとい、一緒に帰ってる…わよね?」

「う、うん」

 いつものお姉ちゃんと違ってなかなか用件を言ってこない。どうしたんだろ?

「あんた達…本当は付き合ってるんじゃないの?」

「えぇぇぇぇぇー!? そ、そんなー違うよー!」

「じ、じゃあ、なんで、なんで二人だけで帰るの?」

「そ、それは………」

 言えない。ここで言っちゃったら、あの人の頑張りが………。



「お願い、答えて」

「…………」

「……あんたがシンと付き合ってたとしても、私は姉として祝ってあげたいし、親友として喜んであげたい。

 でも、このまま私やこなた、みゆきに黙ったまま付き合うんだったら…私は祝っても喜んでもあげられない………」

「お姉ちゃん………」

 お姉ちゃんの目は少し潤んでいたけどとても真剣で、いい加減なことを言ってでごまかしたらいけないものだったの。



「わたしたちが最近、一緒に帰るのには…理由があるの」

 わたしは考え考え、話し始める。

「……その理由ってなんなの?」

「今は、言えないの」

「つかさ――」

「でも! 明日になったら全部分かるよ! 絶対! わたしを信じて!!!」

「…………」

「…………」

 わたしたちは自分と同じ色の瞳を見つめ合う。



「そうよね」

 ちょっとの沈黙。先に声を出したのはお姉ちゃんだった。

「私がつかさにウソをつかないように、つかさが私にウソつかないわよね」

 そう言うとお姉ちゃんは、バツが悪そうに、照れくさそうに、笑ったの。

「ねえ、お姉ちゃん」

「何?」

「もしね、もしシンちゃんと付き合うことになったら、わたし一番にお姉ちゃんに言うよ」

「私も。もし私がシンと付き合う事になったら、一番につかさに言うわ」

 そして、わたしたちは笑いあったの。



「さて、私は部屋に戻るわ」

 ひとしきり笑い終わって少しおしゃべりして(内容はヒミツだよ)からお姉ちゃんは立ち上がった。

「今日はごめんね。いろいろと」

「ううん、わたしがお姉ちゃんだったら、きっと似たようなことやってたと思うし」

「あんたに慰められるなんて、今日は姉妹逆転かしら?」

「あはは」

 お姉ちゃんは大げさにお手上げしてからドアノブに手をかけた。

「おやすみなさい、つかさお姉ちゃん」

「え〜と…おやすみ、か、かがみちゃん」



 ばたん



「は〜続きをやらないと………」

 かがみちゃんが部屋に入った音を聞いて、わたしは宿題を再開したの。





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