「ここよ」

「わあ〜」

 わたしはキッチンに入った瞬間に声を上げちゃったの。

 だって、広くはないけど物凄くオシャレなキッチンだったんだもん。



「ウフフ、気に入ったみたいね」

「は、はい」

「じゃあ私は店に戻るわね。2人っきりだからって変なことしたらダメよ?」

「し、しませんって!!!」

 あの人のツッコミを笑顔で流し、お姉さんは出て行ったの。



 …………。



「と、取りあえず、準備しようぜ………」

「う、うん………」

 あの人とわたしはお互いを見ることなく準備を始めたの。



「ねえシンちゃん、あのお姉さんとマスターって結婚してるの?」

「確か籍はおいてないとか言ってたな。俗にいう内縁の妻ってやつかな」

「そうなんだ」

 あの人達は好きな人とお店を開いて、そこで一緒に働いてて…いいな、羨ましい。私もあの人と――

「……かさ………つかさ!」

「ほいやっー!? な、な、なに、シンちゃん!?」

「なに? じゃないだろ。準備できたぞ、って言ったんだけど」

「え、あ、ごめんね」

「ったく、よろしく頼むぜ、先生」

 先生か…なんか照れちゃうな〜。

「お任せあれ〜」

 そう言ってわたしは胸をドンっと叩いて



「ごほっ、ごほっ」

 むせちゃったの………。





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