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「ねえシンちゃん、これからどこに行くの?」
つかさがそう聞いてきたのは、オレ達が本屋でお菓子の本を買い終えた後だった。
「オレのバイト先」
「それだとこなちゃんにバレない?」
「別のバイト場所だよ。1つじゃいろいろと金が足りないしな」
「掛け持ちしてるんだ〜すごーいー!」
そんな尊敬の眼差しで見られるほどのもんじゃないけど………。
「さあ、着いたぜ」
「シンちゃん、ここってなんなの?」
「喫茶店」
「…………」
つかさの言いたい事は分かる。
看板には『デザートタイガー』という喫茶店らしくない店名がかいてあるし、建物の形は名の通りタイガーの形してるし、
ここでバイトしてるオレですらここが喫茶店ということを信じられないくらいだからな。
「カッコいい〜」
呆気にとられてたんじゃなくて、見惚れてたのか………。
「見とれてないで入るぞ」
オレは苦笑を浮かべながら、喫茶店のドアを押した。
「いらっしゃい、ってなんだキミか。今日はオフのはずだが?」
「バカね、お姫様と一緒じゃない」
「おお、こりゃ失礼。僕が無粋だったよ」
「ち、違いますよ! 2人とも何言ってんですか!? 今日は頼み事があって、来たんですよ!!」
マスター達のいきなりの挨拶にうろたえまくり、早口でまくしたてるオレ。つかさに至っては顔を真っ赤にしてうつむいてるし。
「あら、そうなの? 残念ね」
「まあ、立ち話もなんだし席に着いてコーヒーでも飲みながら、話してもらおうじゃないか」
「変なとこちゃっかりしてるんだよな〜」
「あはは」
オレはつかさに軽く肩をすくめてみせて、席に着いた。
「で少年、頼みというのは?」
「ハイ、お菓子作るためにキッチンを貸して欲しいんですけど………」
オレはおかれたマスターお手製ブレンドコーヒーに口を付けることなく答える。
「……ふーむ。理由は分かったがキッチンはなー………」
やや困った顔をしながら顎を擦るマスター。
「母屋の方はどうかしら? あそこでもよっぽどのものじゃない限り作れるわよ」
「……そうだな。それでいいか少年?」
「あっ、ハイ。ありがとうございます!」
オレ達は座ったまま頭を下げた。