「つかさ、お前………!」

 近付いてみるとつかさがずぶ濡れになっているのが分かった。

 さっきの雨に打たれたんだろうけど………まあ予想をしてない事ではなかったけど、さすがに濡れすぎじゃないか?

「どっかで雨宿りしなかったのかよ?」

「だ、だって、待ち合わせ場所にいないとシンちゃんが困るって思って………」

「携帯があるだろ」

「あっ!」

 口元に手を当てたまま固まるつかさ。

 本当にその事が頭になかったな

 ったく、本当にドジでお人好しだな、オレの彼女は

 取り合えず柊家に寄ってずぶ濡れのつかさを………。

「!」

 そこでオレはようやくある事に気付いた。

 というよりもなんでそれにオレはいち早く気付かなかったのか



 夏という暑さの前でほとんどの人が薄着だ、それはつかさも

 そしてつかさはさっきまで雨に打たれて

 なんてこった、今までつかさは周りから………



 思考が行き着くと同時に、オレの体は自然と動いていた。



「ふぇ、シ、シンちゃん!?」

 つかさの抗議の声を無視し、オレはつかさを抱き上げると全速力で走り出す。

「シ、シンちゃん、どこに?」

「お前の家だ!」

 1分でも、1秒でも早く

 他人の目につかさの姿をいれさすもんか!!



「は、恥ずかしいよ〜、シンちゃん降ろしてー!」

 さすがのロマンチストつかさもいきなりこんな事されるとは思っておらず、顔を真っ赤にして抗議してくる。

 そりゃオレだってこんな往来をお姫さま抱っこして走りたくはない

 でも今は別だ、つかさの危機なんだ

「そんなの出来るか!」

「どうして?」

 オレは自分の胸に収まってるつかさの方に視線を下げる。



「……けてる………」

 そしてすぐに前を向く。

「えっ?」

「服が透けてる」

「えっ、えっ、はうぅぅぅぅ!」

 つかさもようやく気付いて慌てて自分の胸を押さえる。



 いくら豪雨とはいえ、さすがに全部服が透けているという事はない

 しかし絶対領域という言葉がある様に、全部見えていない、見えそうで見えないは、男を色々な妄想に掻き立てる魔力がある。

 そんな魔法にかかった獣達が、つかさを見られるなんて耐えられない



 付き合ってるオレですら我慢してるのに



「……でも、やっぱり恥ずかしいよ〜………」

「うっ………」

 つかさの可愛らしい恥じらいの声は、一瞬だけオレの速度を緩めさせた。





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