「これ? だめだよ〜これは過激すぎるよ〜」

 お姉ちゃんが渡してきた水着は体のラインが強調されるものだったの。

「いいから、いいから、着てみなさいよ」

「う、うん」



 わたしは今シンちゃんと旅行のための水着を買いに着てるの。

 それでお姉ちゃんも一緒に付き合ってくれたんだけど………。

 でもやっぱりこの水着はわたしに合ってない気がする…といっても、わたし一人だと何買ったらいいか分からないし………。

「やっぱり、ダメだよ〜恥ずかしいよ〜」

「大丈夫、大丈夫、開けるわよ」



 しゃー



 お姉ちゃんによってカーテンのレールが開けられる。



 ……………。



 そして沈黙。

「や、やっぱり、つかさは可愛い形が、に、似合うわよね〜

 こ、これなんかどうかしら?」

 お姉ちゃんが気まずそうに新しい水着を手に取る。

 だから言ったのに………。こんなの似合うのゆきちゃんくらいだよ………。

 ……あれ? お姉ちゃん前より少し胸が大きくなった?

 それに体のラインも細くなったような…お姉ちゃんだったらこの水着似合ってそう………。



「双子なのに………」

「ちょ、ちょっと! 人の胸をじろじろ見ないでよ!!」

 わたしの涙混じりの視線に気づいて、お姉ちゃんは慌てて自分の胸を隠す。

「だいたいつかさは私と違って、増減が激しくないじゃない」

「でもそれって…幼児体型ってことだよね………?」

「違ーう! 可愛い系よ、可愛い系」

「そ、そうなの?」

「この旅行であいつにつかさがいかに可愛いかを再認識させるのよ、でしょ!?」

「わ、わたしはそんな………」

「つかさ、シンが過去に囚われたままでいいの? あんたを見てくれなくていいの?」



 シンちゃんが海に行こうと言った時、わたしから一瞬視線を逸らした。

 わたしはそれに気づかない振りをしたけど、シンちゃんはきっとあの子のことを思い出したんだと思う。

 ……シンちゃんが昔に海で助けたっていうあの子を………。

 でもそれも仕方ないことだとわたしは思うの。

 あの子はシンちゃんの心の傷、だからわたしがその子のことを忘れさすことは出来ない。

 ううん、違う



「お姉ちゃん、シンちゃんにとってあの子は大切な人だから忘れたらダメなんだよ………」

「……つかさ」

「でも…わたしもシンちゃんに可愛いって見られたいかな、だってわたしシンちゃんの彼女だもんね!」

「そうこないとね!」

 お姉ちゃんはわたしにウインクを送ると、新しい水着を探しに行ってくれた。





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