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「お、おかえりなふいー」
家に入ると、つかさが噛みながらも出迎えの言葉を掛けてきた。
なんか夫婦みたいだな
ちょっと前まで家でイブを過ごすという不満はもう無くなっていた。
つかさと擬似ではあるけど、夫婦になれるんだったら悪くない。
とはいえつかさの格好が少々おかしい
まるで料理対決に出てきそうなコック姿の完全に料理人スタイル。
クリスマスに相応しい衣装じゃないと思うんだけど………
「よ、ようこそ、ビストロつかさへ〜
当店はわたしが腕によりをかけた料理をお出ししみゃふ」
また噛んだ
緊張しすぎだろ
慣れないことをしているせいか、つかさの顔は自身の格好とは正反対の真っ赤な色をしている。
「じゃあシェフ今日はよろしく頼むな」
取り合えずつかさの主旨はなんとなくだけど分かった。
これだけ可愛いことされたんだから、ちゃんとのらないとバチが当たるというもんだ
「は、はい、じゃ、じゃあどうぞ〜」
優雅とは程遠い、今にもこけそうな足取りでつかさはオレを誘っていく。
色々と気が抜けない
「ごちそうさま」
「おそまつさまでしたー」
恭しく頭を下げるつかさ。
料理の味は予想通り、いやそれすらも通り越しての絶品だったけど、予想を出来なかったのはその種類。
出てくる料理がテレビや本でしか見たことがないようなものばかり。
いかにつかさが今回の事に気合が入っているかが伝わってきた。
「でもどうしたんだ? こんなことして」
ロマンチィックなのを避けて、つかさがこういうことをしたのがイマイチ府に落ちない
そんなオレの疑問を予想してたのか、つかさは小さな笑顔を浮かべる。
「わたし、専門学校もうすぐ卒業するから、その集大成をシンちゃんに見せたいな、って思って」
そっかつかさはもう卒業するんだな
「進路はどうするんだ?」
「う〜ん、取り合えず家で巫女手伝いかな、今のところ」
恥ずかしそうに頬をかくつかさ。
思わずいつもみたいにこっちも笑って頷こうとする。
でも違う
きっと今のはオレへのメーセージ
待ってるって
だったらオレはどう答えたら良いんだ?
無責任なことは言えない
でもこのまま流したら絶対にダメだ
「じゃあ、後片付けしてくるね」
つかさが立ち上がろうとする
ダメだ! 今つかさを行かせたら
払うな!
掴め!
「つかさ!!」
大事なものを