この時間にここを通っている車は少ない。

 無理もない、ここは山道だし街灯も転々としかないし道幅も狭い。

 こんなところを好き好んで走るのは走り屋くらいなんだけど、ここ最近の規制が強まってかその姿は見えない。

 そんな静かな夜道にオレはバイクを走らせていた。

 目的は走りに来た、というわけじゃない、用があるのは山頂の方だ。



 山頂に着いたオレはバイクを適当なところに置くと、買っていた缶コーヒーを片手に見晴らしの良いところへと向った。



 ここを知ったのはこなたの従姉ゆい姉さんに連れてこられたのが最初だった。

 それ以来ここには何かあったら来ていた、その事は誰も知らない。

 いわゆる秘密の場所というやつだ。



 ここはオレにこの世界で生きている事を実感させてくれる。

 この景色の中には他県のみゆきやみなみの家は見えないけど、でもここには泉家やかがみ、そしてつかさがいる。

 もはや『ここ』はオレの帰る場所になっていた、もし元の世界に行けると言われたらオレは間違いなく首を縦に振る。

 でもあっちでのオレのやれる事が終わったら、オレはここに帰ってくるだろう。

 それくらいここには



「大切な人達がいるんだ!!!」



 声を大きくして言う、周りには人なんていないし何も気にする必要はない。

 声にするとそれがオレの力になる気がした。

 そう、別にオレを支えてくれる人だけが大切な存在じゃないんだ!

 つかさみたいに守らなきゃいけない存在、それがそもそもオレが力を欲した理由。

 だから



「オレはつかさを守る!!!」



 どんな事をしても



「よし!」

 オレをコーヒーを一気に飲むと、バイクの方に走って戻る。

 モヤモヤは解けた。

 明日つかさに謝って、今回の事は終わりだ。

 オレはバイクのエンジンをふかせ、その場を後にした。





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