10


「珍しいわね、あくび一つもしないなんて」

「えへへ」

 朝の登校時、いつも通りわたしとお姉ちゃんは二人を待っていたの。

 今日ばかりは眠気なんてどこかにいっちゃってる。



「やあ、悪い悪い」

 わたしとお姉ちゃんの姿を見つけると手を振って謝るこなちゃんだけど、いつもより早い。

 きっと色々と気を遣ってくれてるんだと思う。



「おはよ、シンちゃん」

「ああ、おはよう」

 いつもの優しい笑顔で挨拶を返してくれるあの人、まずは第一関門クリア!

「昨日はごめんね」

「いや、オレの方こそごめん」

 お互い言い終わるとわたしたちは笑い合う。

 そしてあの人はいつもみたいにわたしの頭を優しくなでてくれる。

 でも気づいてた、あの人が理由を言おうとはしないことに



「さて、珍しく四人が早く揃ったんだし、さっさと行きましょう」

「だね〜今日はみゆきさんよりも早いかも」

 お姉ちゃんもこなちゃんも全然気にすることなく、歩いていく。

 でもきっと、きっとわたしはお姉ちゃんとこなちゃん、ゆきちゃん、三人にものすごく迷惑をかけちゃった。

 わたしが知っていればみんなが嫌な気分になることなかったんだ………。



「どうした、つかさ?」

 だから知りたい、わたし、あの人のこと。

「あ、あのね、シ、シンちゃ―――」

 でもわたしの言葉が全部口から出ることはなかったの。



 今のわたしになにができるんだろ?



 仲直りするのにみんなに助けてもらって、そんなだめなわたしがなんでもできるあの人を助けることなんてできるの?

 それに聞いたらまたあんな空気になっちゃう、あの人が別人みたいな雰囲気になるあの空気に………

 そんなことを考えるとたちまち聞く勇気がしぼんでいった。



「つかさ、どうした?」

「ううん、なんでもないよ!」

 わたしにしては珍しく器用に笑顔に全てを仕舞い込むことができたの。

 でもそんなのなんの意味もないよ………。



 少し前を歩くお姉ちゃんとこなちゃんは楽しそうにいつものやりとりをしてる。



 またみんなとの差がついちゃった………





戻る   別の日常を見る   進める