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「つかさの事信じられない?」
オレが無言でいるとかがみはなおも聞いてくる。
答え方しだいではいつものとは全く違う、大喧嘩にまで発展するのも辞さない、かがみの目はそう語っていた。
「そういう事じゃないんだ、ただな………」
これを言うのは、つかさを可愛がっているかがみを前にして言うのははばかられた。
だけどかがみの無言の視線がオレに続きを促してくる。
オレはその圧力に屈する形で口を開く。
「無駄に怖がらせるんじゃないかと思ってさ」
今でこそこうして、皆と平穏無事な学生生活を送ってるが、オレの過去はとても自慢して人前で話せるものじゃない。
もちろんオレは自分の過去ついて後悔はしていなし、忘れたいとも思っていない、ただ進んで自分から話そうという気にはやはりなれない。
「じゃあなんで私やみゆきには話してくれたの?」
かがみとみゆきこの2人にはオレが自分から過去の事を話した。
当初は話す事を躊躇っていたが、オレの事を知ってほしいという想いと、
何より2人のオレの事を知ろうとしてくれる強い想いに押され、結局は2人にオレの過去を話した。
そして2人はその強い心でオレの過去を受け入れて、なおかつオレの存在を許してくれた。
今だと話してすら良かったと思えるくらいに、2人はオレの支えになっている。
ただ皆が皆、2人とは違う。
「つかさはお前やみゆきみたいに強くない」
つかさはとても優しい。それはしばしばお人好しとも取られるくらいに。
それはかがみやみゆき、こなたとは違う、優しさの種類。
傷つけたら壊れてしまいそうな優しさ。
「じゃあ、あんたにとってつかさは邪魔な存在、重荷なの?」
妹を否定されたと思ったかがみは、泣きそうな顔と怒りの顔をそれらを足した顔でオレを睨みつけてくる。
「そんな訳ないだろ!」
オレの言葉にかがみは何も返してこない。たけど怯んだ様子も見せずに睨む様にこっちを見てくるだけ。
どうやら怒っているものの、オレの話を最後まで聞こうとしているらしい。
「……オレはつかさにお前と一緒の事を求めてない!!
こなたにも、みゆきにも、誰にも同じのなんて求めてない!!
でも一緒なんだ、オレの中では大切な………」
頭の中で整理できなかった事が、言葉にして出してみると想いの外簡単に説明が出来た。
つかさはつかさなんだ。
こなたの様に負の激情を流してくれなくていい。
かがみの様に叱咤激励してくれなくてもいい。
みゆきの様に包みこんでくれなくてもいい。
つかさはオレが守る!!!
「……うん、納得しきれないけど取り合えず、安心はした」
かがみは小さく頷くとそこでようやく微笑んだ。
がらがら
話が一区切りついたのを見計らった様に、C組の教室から教育相談を受けていた人が出てきた。
「でも一つだけ言わせて。
つかさはあんたが思ってるほど弱くない」
オレがどう答えていいか分からないでいると、かがみは手を振って教室へと入っていった。