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放課後オレは1人廊下の窓から外を眺めていた。
別に黄昏ているわけじゃない、単に今日が教育相談の日だからだ。
もっとも今は進路の相談よりも今のオレの悩みを相談したいくらいだ。
「やっほー、あんたも?」
振り向くとかがみが手をひらひらさせながら、こっちに歩いてきていた。
相変わらずコイツ達が相手だと油断しっぱなしだ。
今も声を掛けられるまで全く気付かなかった。
「今日はこなたに助けられたわね」
オレの隣に付くと、かがみは窓の外を見たままいつもと変わらない感じで話しかけてくる。
これはあの時のオレの態度に怒っていないという合図なのだろう。
「ああ、ちゃんとお礼をしとかないと後で何を言われるか」
「ご愁傷様」
「全くだ」
オレとかがみは短く笑う。
そしてオレ達2人は再び、窓の外に視線を移す。
「つかさの事、怒らないでね」
「大丈夫だ、怒るわけないだろ」
実際に悪いのはオレだった。
つかさは日常会話をしただけ、それに勝手に傷ついたオレが悪いのであって、当然つかさに対する怒りの感情なんてなかった。
「そっか、それならいいわ、あの子気にしてるから、きっと」
若干の皮肉が込められてるのはやはり妹を傷つけられたからか、普段は反論するところだけど、
今回ばかりはかがみの攻撃を甘んじて受ける、それくらいの事をオレはしてしまったのだから。
「つかさにはまだ話してないのね」
「ああ」
なんの事かは分かっている、オレの過去についてだ。
こなた、つかさ、かがみ、みゆき、いつも行動を共にしている中で、この事を知らないのはつかさだけだ。
「話さないの?」
遠くで鴉の鳴き声が聞こえてきた。