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「で、でも、悪いことばかりじゃないよねー! みゆきさん!」
「えっ? は、は、はい! 遠くない未来に食料問題が訪れると言われてます、それを救うのにこういった研究は必要不可欠です!
また新たなエネルギー資源ともなる研究も行われています!」
「へ〜じゃあこの大豆とかが私達、人間を助けてくれるかもしれないのね」
不穏な空気を払おうとみんなが早口で言葉を次々とかぶせていく。
「それってシンちゃんみたいだね」
「オレ?」
でもこの空気はわたしのせいで起きちゃったんだから、わたしがどうにかしないと
お姉ちゃんたちに助けらてばかりだったら、駄目だもん!
「シンちゃんはいつもみんなを助けてくれるもんね!」
「……どうだかな」
微笑を浮べるあの人、でもその笑みはいつものものじゃない、嘲りの笑み、そして笑みの相手は…あの人自身………?
周りを見るとお姉ちゃん達は苦虫を噛み潰した顔をしてる。
この感じは初めてじゃない、何度か経験したことがある感覚。
これはあの人が傷ついた時に起こる雰囲気。
わたし、あの人の傷にふれちゃったの?
『シンは過去にはつらいことがあってそれが傷になってる』
そうこなちゃんから聞いたのは、あの人と会ってすぐのこと。
それはデリケートな問題だから自分の口からはとても言えない、どうしても知りたいなら本人に聞いて、とこなちゃんに言われた。
そのことはあの人とおしゃべりできるようになった今でも、聞けていない。
あの人は昔の話をしたがらない、はずみで話す時があったんだけど、その時のあの人は最初に会った時の暗い目になっていた。
あの人のあんな顔はもう見たくない
だってそれはまるで別人のようだったから
だから今のわたしはどの言葉であの人に傷をつけたのがわからない。
でもみんなを見るとなんであの人が傷ついたかわかるみたい。
こなちゃんだけじゃない、お姉ちゃんも、ゆきちゃんも
わたしだけ、わたしだけがわからない
わたしだけが知らないあの人のこと………
「女傑族必技・火中天津甘栗拳!!」
潰されそうなまでの重い空気を振り払うかのように、こなちゃんの声が響く。
こなちゃんは次々とあの人のお弁当にある栗を口の中に運んでいく。
「あ〜!? お前、何するんだよ!!」
「ひでぶっ!?」
あの人がこなちゃんの頭にチョップを入れて、重い空気はようやく飛んでいってくれた。