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長い長い授業が終わって、ようやく今日一番の楽しみのお昼ごはん。
あっ、別に食べるのが楽しみってわけじゃないんだよ
「シンちゃん、はいこれお弁当だよ」
「おっ、サンキュー」
朝一番で作ったお弁当をあの人に渡す、その時は少しお嫁さん気分。
「私もやっぱり、料理しようかな」
そんなわたしの様子を見て、お姉ちゃんがボソッと呟く。
「それは困るかも」
これだけがわたしがあの人にできる、唯一のアピールチャンス。
お姉ちゃんみたいにお互いのことを言い合えるわけじゃないし、
ゆきちゃんみたいに何かの知識を教えれるわけじゃないし、
こなちゃんみたいにあの人を変えていくことはできない。
わたしが一番チャンスが少ない。
それだけじゃない、わたしとお姉ちゃんたちとの間には開きがある。
アピールするだけじゃ埋めれないなにかが………。
お姉ちゃんたちとあの人の様子からそれがなんとなくわかっちゃう………。
「まあ、かがみんがつかさレベルの料理の腕になるには、人類が宇宙に出て、生活するくらいの年月がかかるね♪」
「う、うるさいわね!」
「そ、それは言いすぎかと、ですがつかささんの料理の腕は絶品ですから、一朝一夕には届かないかと」
「やっぱりそうよね〜………」
だからこれだけは負けるわけにはいかないの、お姉ちゃんにも、こなちゃんにも、ゆきちゃんにも。
「やっぱり和食だよな、これをマスターしないとキッチンマイスターにはなれないよな〜」
あの人は海外の暮らしが長かったみたいだから、和食を作るのは苦手なの。
でもその他の料理は美味しいし、わたしの知らない海外の料理も知ってるんだよ、おまけに英語もぺらぺら、すごいよねー
「大丈夫だよ、シンちゃん、その大豆は遺伝子組み換えじゃないから」
ひじきと大豆を掴んで見ているあの人にわたしは何気ない冗談を言う。
だって今まで遺伝子組み換えが入ってますなんて表示見たことないもん♪
「そっか」
あの人はそう言うと、お箸を口に運ぶ。
一瞬だけ、本当に一瞬だけ時が止まったの。
それがわたしの気のせいじゃないのは、お姉ちゃんたち三人の顔を見たらわかる。
「……なあ、つかさ、遺伝子組み換えってやっぱり、その…怖いか?」
「えっ? ……う、うん、遺伝子って大事なものなんだよね? そんなところを改良するって、やっぱり怖い…かな………」
わたしは自分が思ってることを言ったの、嘘をついたら余計にこの雰囲気がどうにかなるんじゃないかって………
でもわたしの答えにあの人は不満だったのか、不穏な空気はますます濃くなっていく。
……どうして? ……わたしなにか悪いこと言っちゃたのかな………。