予定の電車より乗るのが1本ばかり遅かった。

 恐らく2人はもう来ているだろう。

 2人とは言うまでもない、オレとこなたの親友であるかがみとつかさの2人だ。



「また負けかよ」

「気にしなさんな」

「いや、お前のせいだからな」

 オレは遅れの原因を睨みつけるが、全然効果なし。



 こなたが昨日たっぷりと夜更かしをしなければ、今日はオレ達の方が早く来れたはずだった。

 とはいうものの、こなたの夜更かしはもはや日常になっているため、勝つという事が完全にタラレバになってるのが悲しい。

 こうなったらつかさが寝坊してくれるのを願うばかりだが、かがみがそうはさせないだろう。

 かがみも俺に負けず劣らず、負けず嫌いだ。

 違うのはオレとかがみとではパートナに対する発言権が違うことだ。

 片や双子の姉で尊敬の対象、片や居候でからかいの対象。

 どちらが言うことを聞かせられるか分かりきってるほどに分かってしまう。

 まあ勝ったからといって別にどうにでもなるもんでもない。

 せいぜい口ゲンカで多少優位になれるくらいだ。

 ただこういうどうでもいい勝ち負けが、今のオレには無性に楽しい。

 前のオレの中での勝ち負けといったら命の取り合いでしかなかった。

 それがなんの運命かこんな平穏な日々を過ごしている。

 それをくれたのは―――



「あんた達ねー遅れてきたんだから走ってきなさいよ!」

 少し遠くで怒鳴っているかがみにオレとこなたは互いに肩をすくめて、ゆっくりと歩いていった。



「シンちゃん、シンちゃん、おはよ〜!!」

「ああ、おはよ」

 オレが近付くとつかさが、抱きついてくると思えるほどに近付いてくる。

 こなたがつかさは犬と例えたが、なるほどと思う。

 この愛くるしさは通じるものがあるな。



「どったのつかさ? テンション高いけど」

 オレと同じ疑問をこなたが姉であるかがみに尋ねる。

「今日は何曜日でしょう?」

 何故か面白くさそうな顔をしながら、分かりきってる質問をするかがみ。

「えっ? え〜っと昨日、『生徒会の一存』を見てたから………」

「あんたは相変わらずそういう覚え方か!」

 今日も朝からかがみのツッコミは冴えに冴えてる。

 周りにはマイペースなヤツが多いから、正直かがみがいるといないとでは、オレへの負担が大違いだ。

 もっともかがみにその事を話したら、同じ事を思ってたらしい。



「結構便利だよ〜っと木曜だね…あっ、そっか、今日はつかさのターンか」

「どういう事だよ?」

 つかさのターン、そうじろうさんやこなたの影響でオレもこういう系のネタの意味はほぼ知ってるし、並のヤツよりはそっちの知識はある。

 もちろん『俺のターン』という言葉の意味も知ってる。

 ただなんで木曜日が『つかさのターン』になるのかが分からない。



「あんたは知らなくていいの!」

「そうだよ、シンちゃんは知らなくてもいいんだよ〜」

「お前も意味分かってないだろうが!」

「あう〜」

 もはや知識はオタク級のかがみはともかくとして(こなた談、本人は強く否定)、

本来の意味すら知らないつかさがそれを知ってるとはとても思えない。



「シン、つかさをいじめないの!!」

「どこがいじめてるんだよ!? つかさのやつ笑ってるだろ!!」



 今日も平穏だけど変えがたい1日が始まる。





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