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「今日はシンちゃんと………」
わたしはここ最近全く書く気が起きなかった日記をつけてるの
今日は今まで白紙だった分まで書けちゃいそう
今が夜じゃなかったら、飛び跳ねて踊っちゃいそうなくらい気分は晴れやか
ピーンポーン♪
お客さんが来た合図の家のインターホンも、今のわたしには祝福のチャイムに聞こえる。
昨日まであれもこの世の終わりの音に聞こえてたのが嘘みたい
こんこん
「つかさ」
「どうしたの?」
日記を書いてる途中でノックをして部屋に入ってきたのは、浮かれているわたしとはまるで違う雰囲気のお姉ちゃん。
でも暗いとかそういうんじゃなくて、なにかとても真剣な感じ………
「シンが来てる。話があるんだって」
お姉ちゃんの様子から、わたしはただならないことというのを感じることができたの
あの人にバイクに乗せられて、連れて来られたのは近くの山だった。
夜にこんなところに歩くなんて、いつもだったら怖いって思うけど、今はあの人に手を繋がれてるから平気! すっごく安心できちゃう♪
バイクから降りて少し歩いて、あの人の足が止まる。
着いた所は夜景がとっても綺麗な展望台みたいなところ。
「うわ〜、きれい!」
「ここはオレのとっておきの場所なんだ。誰も知らない。つかさしかな」
「そうなの?」
「ああ」
あの人の言葉にわたしの胸が高鳴る。
誰も知らない、ってお姉ちゃんたちも知らないってことだよね? わたしだけって意味だよね?
でも、どうしてわたしをここに?
「最近はたまにしか来ないけど、ここに来た当初はしょっちゅう来てたんだ」
わたしの疑問をよそにあの人はわたしより、一歩前に出て話し始める。
「ここで空を見てたらさ、この無数の星達の中にオレがいた場所があるんじゃないか、ってな」
「……シンちゃんの住んでた場所ってそんなに遠いの?」
今までだったらとても聞いちゃいけないことだったから、わたしは恐る恐るあの人に尋ねたの。
でもあの人はなにも答えずに、さらに二、三歩前に歩いてからわたしの方へ振り返る。
「つかさ、オレの話を聞いてくれるか?」
星空と夜景をバックにしてあの人は微笑みかけてきた。