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「つかさ!」
見栄を切ると同時にこなたはつかさの手を掴み、オレの方へと走ってくる。
そしてオレの方も男達が呆然としてる隙を付いて、地面から跳躍して距離を取る。
「逃げるぞ!!」
オレからの指示を予想していたのか、こなたはスピードを上げる。
さっきの一撃は男を吹き飛ばしたものの、見た目以上に利いていないのは当のこなたが1番よく分かっている。
こなたの使う合気道というやつは、本来相手の力を利用するタイプの投げを中心にする格闘技だ。
だけどさっきのは明らかに自分の力のみの打撃の一撃、さらに体格の小さいこなたではどうしてもパワー不足。
それでも1対1ならスピードを生かしてどうにかなるだろうが、今はつかさがいるし、それも出来ない。
ならオレが即座に男達を倒せばいいのだが、戦いには予想外の事が付きまとう
つかさ、そしてこなたにも万が一という事があるかもしれないし、それは絶対に避けないといけない
それが分かってるから、オレは撤退を判断し、こなたはそれに頷いた。
幸いにも男達はこなたのお陰で完全に追撃が出遅れていた。
「はぁはぁはぁはぁ!!」
「ねぇ、シン止まらない?」
しばらく走っているとこなたが提案してきた。
オレとこなただけならこのまま撒く事も出来るが、息を切らしながら走っているつかさはもたないだろう。
「そうだな。ここらで隠れてやり過ごすか」
「はぁ、はぁ、ごめんね…わたしのせいで………」
オレもこなたもつかさに気を遣わない様に言ったつもりだったけど、
残念ながら無駄に終わったらしく、疲れも手伝ってかつかさは再びしょんぼりとしてしまった。
何かつかさに声を掛けようとするが上手い言葉が出てこない。口下手な自分が情けない。
「気にしない、気にしない。適材適所のバランス構成はパーティ編成の基本だからね〜」
「う、うん」
完全にとはいかないが、つかさにぎこちないが笑顔が戻る。
こういう時気軽に軽口が言えるこなたが羨ましい
しかもそれが全体の気を楽にしてくれる
適材適所か、なるほどな
「よし、行くぞ」
オレの誘導の元にオレ達は路地裏の一角に隠れた。