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「なぁ、こなた」
オレは隣で併走しているこなたに話掛ける。
もちろんオレもこなたもスピードを緩めずに。
「オレ、つかさに助けてもらってたんだな」
「わたしも今回の一件でよ〜くわかったよ、つかさの存在がさ」
オレは頷くと再び、そして謳うように口を開き始める。
「つかさがいないと」
「かがみはテンション低いし」
「みゆきはオレ達の世話でストレスが溜まるし」
「シンは気が短くなるし」
「こなたは言葉に笑えない毒が増える」
まるで最初から決められてたものをなぞるように、オレもこなたも次々と歌詞を紡いでいく。
きっとかがみもみゆきにもこれが謳えるはずだ。
さっきのこなたとかがみの喧嘩している時、もしもつかさがあの場に最初からいれば、
恐らくつかさは何もしない
せいぜいこなたとかがみ、2人の間でオロオロしていただけだろう。
普通だったらそんな奴は仲間内で馬鹿にされ、蔑ろにされていく。
だけどつかさをよく知った人ならそんな感情は生まれないだろう。
つかさがその場にいるだけで、怒りとか憎しみとかそういう負の感情が中和され、穏やかな気分になる
それはオレにも、こなたにも、かがみにも、みゆきにも持っていない、つかさだけしかもっていないもの
それにオレ達は今まで助けられていた
「地味、だけどね」
心の中でも読んだような、そしてあまりにも的を射すぎたこなたの発言に苦笑が出る。
「でも、許せないよな」
「えっ?」
「今までオレはつかさを助けてた、って思ってた
でも、実際は逆でオレがずっと助けられてた
……それなのに、気付かないばかりか、自分だけいい気になって………、情けないよな………」
「シン………」
今までのオレだったらここで暴走していたかもしれない、いや、その事にすら気付けずにもっと皆を傷つけたかもしれない
でもオレだって少しは成長したと思ってる
こなたやかがみやみゆき、そしてつかさのお陰で
「だからさ、オレつかさにお礼を沢山言わないと。
だから絶対につかさを見つけて帰るぞ、もちろん笑顔でな!!」
「うん!!」
そしてオレ達は校門を出た。
ここまででつかさの姿、気配は見られなかった。
やっぱり外に出たか。
しかしどっちだ?
校門からは左右どちらにでも行く事が出来る。
「オレは右、こなたは左!」
「おーまかっせ!」
迷ってる時間は惜しいので、オレはすぐさまこなたに指示を飛ばす。
「でもシン、つかさに会ったらどうやって連れ戻すの?」
「知るか! だけどどうにかする!!」
「ちょっ!?」
オレの胸を張った発言にコケかけるこなた。
どうやらやっとオレ達の調子が戻ってきたみたいだ。
「OKOK! 愛と勇気と根性と気合があればビームも曲げられるもんね! なんとかなるっしょ!」
「そ、そうなのか?
とにかく見つけたらすぐに連絡しあう事! 頼むぞ!」
こなたの返事を聞かずにオレは走り出していた。