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あんなに仲が良いお姉ちゃんとこなちゃんが怒鳴りあうなんて………
わたしは帰ったふりをして教室の外で、みんなの話し合いを聞いていたの
こんなのはいけないことで、ずるいことだってわかってる
本当はすぐに話し合いに入って、それでどうにかしてあの人とまた仲良くできたら、って、
でも中々勇気が出なくて、教室の前で立ち往生していた。
そんな時中から聞こえてきたあの怒鳴り声。
それを聞いてたらいてもたってもいられなくなっていた。
これ以上わたしのせいで親友同士で傷つけあって欲しくない
わたしは意を決して教室のドアを開けた。
「つかさ!?」
「帰ったはずじゃ………」
みんなすごく驚いた顔してこっちを見てくる。
せっかくわたしのために話してくれてるのにごめんね
でも、もう耐えられないよ
「もうやめて、わたしなんかのせいで喧嘩しちゃだめだよ!!!」
『つかささんの―があるから』
もしも、もしもゆきちゃんのあの言葉が本当だったら、これでみんなは喧嘩なんてせずにまた仲良くなってくれる
そうだよね?
「みんなわたしの最後のお願い聞いてくれるかな?」
誰も頷かないけど、わたしは言葉を続ける。
「みんな、仲良くしよ、みんなが笑ってるほうがいいよ、これからも、ずっと………」
あれ? 笑って言ったつもりなのに涙が出てくる………
だめだよ! 笑わないと
『私達はいつも仲良く笑っていられるんですよ』
それがわたしがみんなにできる唯一のことなんだから
わたしは溢れてくるものをなんとか止めると、あの人の方を向く。
「アスカ君」
最後くらいは『シンちゃん』って呼びたかったな
わたしってほんと意気地がないよね
「今までありがとう
すっごく楽しかったよ!」
わたしなりに笑顔のつもりなんだけど、きっとあの人から見たら、歪んだ歪な顔になってると思う。
だって今でも全身から震えを感じるんだもん
でも少しでも、わたしの笑顔を見せたい
これであの人の助けに少しでもなるんだったら
これが最後なんだから
最初から言えばよかった、そしたら誰もこんなにも傷つかないで済んだのに
お姉ちゃん、ごめんね
こなちゃん、ごめんね
ゆきちゃん、ごめんね
いっぱい迷惑かけちゃったね
シンちゃん、ごめんね
いっぱい助けてもらっちゃったね
できたらいつかみんなとまた笑い合いたいな
「さようなら」
わたしはみんなにそれだけ言って、教室を出ていった。