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「どうしたのよ、その腕!?」
昼休みに教室にやってきたかがみが、オレの手に巻いてある包帯を見て目を丸くする。
「昨日バイトで皿を落としたんだよ」
答えるのを拒否しているオレに変わり、その時現場にいたこなたが答える。
「あんたが!? ……って最近のあんたじゃ不思議じゃないわね」
かがみが少々重い溜め息を吐いた。
つかさと話さなくなって、1週間以上が過ぎていた。
依然昼休みはオレとつかさは一緒に食べていない。
そんなオレとつかさの関係は、こなた達3人の誰かが日替わりでつかさと一緒に食べているという、
見るからにギリギリの関係で繋がっているだけだった。
そしてオレはつかさと話す事が出来なくなって、明らかにおかしくなっていた。
昨日やらかしたこの手の怪我がその一例だ
その他にも気が抜けてる時間が増えていた
「人間なんだからミスをするだろ」
かがみと会話するのが面倒臭くなりオレは適当に言葉を返す。
「それでも最近のあんたはボーっとしすぎ!!」
「うるさい!」
なおもしつこく言ってくるかがみにそれだけ言って、オレは会話を切り上げる。
気が抜けてるのは自覚しているが、他人に改まって言われると腹が立つ。
「何よ、逆ギレ!?
あんたはそもそも打たれ弱すぎんのよ!!」
「なんだと?」
オレはかがみを睨みつける。
最近のかがみは事あるごとに喧嘩を吹っかけてくる。
今回のオレとつかさの事で不安になってるのは分かるけど、ここまでくればもはやただの八つ当たりでしかない。
「何よ!?」
かがみもオレの睨みに全く怯む様子を見せず睨み返してくる。
傍から見たらいつもの光景かもしれない。
ただオレとかがみには分かっていた。
オレとかがみの喧嘩はこんなんじゃない。
オレもかがみも言いたい事を今までぶつけてきた。
だから相手の事だって理解出来た。
でも今のオレにはかがみの言いたい事が見えてこない、そして恐らくかがみの方も………
それは怒りしか見えないからだ。そしてその怒りがどこからきているのかが分からない。
「なんだよ、その目?」
「生まれつきよ」
その怒りが今のオレ達自身で制御出来ない程に膨れ上がっていた。
さらに悪い事にこういった場面で、仲裁役になるつかさとみゆきがいないのも響いていた。
「と、とりあえずさ、お弁当にしよ、ね、ね?」
慣れない仲裁役をやるこなた。
完全に役割がおかしい、チグハグだ。
そこまで思って、全て自分のせいだという事を思い出す。
ようやくそこで温度が下がり、怒気を中へと押し込める。
「かがみ、悪い………」
「……こっちこそ、ごめん………」
多少ぎこちないが、オレ達は互いに頭を下げる。
これ以上、皆との仲がギクシャクなるのはごめんだ