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「おーっす、帰りましょ」

 いつもと一緒でお姉ちゃんが教室に顔を出してくる。



「あれ? 勉強会は?」

「オレが今日バイト」

「なるほど〜」

「それでは帰りましょう」



 みんなの会話が遠く聞こえる

 昨日まであそこの中にわたしもいたんだよね………

 なんだか、すごく長くて楽しい夢を見てたみたい



 ……夢から覚めなかったらよかったのに………



 でも今のこの光景は夢なんかじゃない、悲しいくらいの現実

 だからってみんなにこれ以上わたしのことで無理をしてほしくない

 ……今日からはわたし一人で帰るようにしないと………



「ほら、つかさ帰るわよ」

 想像した通り、お姉ちゃんはわたしと一緒に帰ろうしてくれる。

 でもわたしはお姉ちゃんに甘えてばかりちゃだめなんだよね

 だってお姉ちゃんのあの人への想いを知ってるから、だからわたしのせいでそれを邪魔したらだめだから

「ほ、ほ〜双子姉妹で仲良く帰りたい、と。

 それなんて双子レズプレイ?」

 わたしが言葉を開く前に、こなちゃんが口を挟んでくる。

「ちょっ! おま!? 大きな声で誤解されるような事を!!」

「おい、お前達うるさいぞ!」

 たちまち、いつものドタバタになっちゃって、わたしは完全に言うタイミングを見失ってしまったの………

 だめだよ! いつもみたいに、ぼーっとしてたら…なんとか、なんとか言わないと………



「つかさ、ほら、行こ!」

 でもわたしが言う前にこなちゃんがわたしに手を差し出す。



 だめ! ここでこの手を掴んだら、みんなの優しさに甘えちゃだめだよ!



 頭の中でわたしを制止する声が響き渡る。



 わかってるよ! でも、それなのに、わたしはみんなの優しさに甘えてしまう

「う、うん………」

 わたしがおそるおそる差し出した手をこなちゃんは強く握る。それこそ痛いくらいに



 わたしはなんて弱い人間なんだろ、前からわかってたけど今はよりそう感じる。それこそ痛いくらいに





 みんなと並んで帰る。その中でわたしとあの人との距離は一番遠い

 でも、この形がいいのかもしれない





「それでは失礼します」

「ああ、じゃあな」

「さあ庶民の者共、帰ろ〜ぞ」



 わたしは一応輪の中にいるんだし、これだったらみんなに気をつかわせることもないし、あの人を傷つけることもない





「じゃあ、また明日な」

「うん、また明日」

「ばいに〜☆」



 卒業まであと半年もないんだから、このまま、この形でいけば………





「つかさ………」

「大丈夫だよー、お姉ちゃんは過保護すぎるよ〜」

「う、うん………」



 そうして卒業すれば消えていく

 あの人への、思い出も、想いも、絆も





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