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 あの人が来るまでは昨日のことを謝ろうと思ってた。

 でもあの人の姿を見ると体が震えて、怖い、ということで頭がいっぱいになった。



 ……もうだめだ、完全に嫌われた………



 ううん、そんなことよりも………



 ごめんね、ごめんね、また傷つけちゃったね

 わたしでもなにかの役に立つどころじゃないね

 今もこんなに後悔してるのに、怖いって心のどこかでそう思っちゃってる



 もう一緒に、笑えない、お話できない、お昼食べられない

 だってわたし、あの人の顔が見れないもん

 だからわたしはまたあの人を傷つけちゃう、あんな顔見たくない

 大好きな人のあんな顔を………



 傷つけたくない………



 いっそあの人が冷たい人ならよかったのに

 それだったらわたしことなんて、放っといてくれるし、気にもしないのに………

 でも違う

 あの人はいつだってすごく優しい。だからわたしなんかを守ってくれる



「どうして、どうして………」



 優しいって知ってるのに、分かってるのに



 あの人に笑いかけれない、見ることができない



 キーンコーンカーンコーン♪



 授業終了のベルが鳴る。

 でもわたしにはこれが何時間目の終わりのベルかも分からない。

 周りを見渡すと、机をくっつけたり、包みを持った人が教室に出たり入ったりしていたから、

そこでようやくお昼休みになったことが分かったの。

 それでもわたしは立てなかった。



 いつもみたいにみんなの、あの人の側にはいけなかった



 怖かった。あの人が、わたしがあの人を傷つけることが―――

「なーにしてんのよ、つかさ、食べるわよ」

 顔を上げるとお姉ちゃんがお弁当を片手に笑っていた。

 そしてお姉ちゃんはそのままわたしの前の席に座る。

「……えっ、な、なんで………?」

「たまには二人で食べてもいいでしょ? 懐かしい感じじゃない?」

 そう言うとお姉ちゃんはなにごともなくお弁当を広げる。

 そんなお姉ちゃんの気遣いが嬉しくて、それと一緒に自分がものすごく情けなくて、今まで溜めていたものがでてきちゃったの。



「……ううっ…ひっく…ひっく…ううっ―――」

 そんなわたしの頭をお姉ちゃんは優しくなででくれていた。





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