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「それはさておき、シンさんがつかささんをそう思っておられるなら、過去の事をお話しにならない方がいいかもしれませんね

 そういう事は伝わってしまいますから」

「そんなものなのか?」

「女の勘はするどいんですよ」

 小悪魔的な笑みを浮べるみゆき、こんな笑みを普段見せていたらみゆきのファンは今の何倍にも膨れ上がるだろう。

 それくらい魅力のある笑みだ。

 ただそれと同時に、まるで全ての考えはお見通しと言われてるみたいで、違う意味でドキッとしたのだが………。



「さてそろそろ勉強を始めましょうか」

「あ、ああ………」

 みゆきの言葉によって、この終わって欲しいような、終わって欲しくないような時間は終わりを告げた。

 本来オレ達が放課後に残ってる理由は、受験のための勉強会だ。

 今日でこそオレとみゆきの二人だけだが、ほぼ毎日、オレ、かがみ、みゆきは集まって勉強している。(時々、こなたやつかさも参加する)

 オレ1人で勉強すると苦手な教科がサボりがちになるし、分らないところはお互い聞けるし、この集まりは大いに意味があった。

 もっともかがみとみゆきはこれといった苦手科目がないため、聞いてるのはほとんどオレなんだが………。



「……シンさん、失礼ですが、それはかがみさんのノートでは?………」

「へっ?」

 間抜けな声と共にオレはノートの表紙を見ると、そこには綺麗な字で『3年C組 柊かがみ』と書かれていた。

「しまった! 借りっぱなしだった………」

 しかも確か今日中に帰せと言われていた。

 脂汗が全身から吹き出る。



 見える、見えるぞ、オレにも明日、鬼になってるかがみの姿が!



「今日は中止ですね」

 苦笑いのみゆきにオレは頷くと急いで帰る準備を始める。

 今からだったら、まだ追いつくはずだ。

「すまないみゆき、この借りは必ず返す」

 はい、楽しみにしています」

 再び小悪魔的な笑みを浮べるみゆき。

 これはかなりの代償を払う必要があるな…みゆきは元々1人でも出来るんだし………。

 なんだか最近皆に異常に貸しを作ってるのは、気のせいか?



 オレって一応エリートって呼ばれてたんだよな?



 そう自問せずにはいられなかった。





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