「2人とも遅いな」

 いつもの駅での待ち合わせ場所。今いるのはオレとこなたという、いつも遅れてくるグループだった。

(遅れる原因は主にこなただ、誤解しないようにな)

「案外徹夜でチョコ作ってたりして」

「まさか」

 こなたの冗談をオレは一笑に付す。

 作るとしてもかがみはこういうのは苦手だから適当に作るだろうし、つかさはこういうのは手馴れているし、

どっちにしても徹夜しそうにはなさそうだけどな。



「おーす」

「おはヨーグルト! こなちゃん、シンちゃん!!」

 そんな2人が改札にやってきたのは、オレ達が乗ってきた電車の3本後が駅を出た時だった。

「つかさがおかしくないか?」

「あれはオールのテンションだね」

 オレの疑問にオールのプロフェッショナルこなたがもっともらしく答える。

「シンちゃーん!!」

 そんな絶好調のつかさが横断歩道を走って渡る…待て、今信号は………!!



 ププッー



「つかさ!! 右!!」

「えっ?」

「つかさー!!!」

 クラクションと同時にかがみの悲鳴、そしてオレはそれよりも早くつかさに飛び込んでいた。



「バカやろー、気をつけろ!」

「すみませーん!」

 オレとつかさに変わってこなたが運転手に謝罪する。



「つかさ大丈夫か?」

「ケガしてない!? どこか痛くない!?」

「う、うん大丈夫…シンちゃん、ありがとう………」

 オレとかがみの心配する声に、呆然としたままつかさは答える。

 軽いショックを受けてるみたいだけど、ちゃんとケガしないようにかばったから、別段外傷は見られないし、大丈夫みたいだな………。

 よかった。せめてこっちの世界では『バレンタイン』はいい日にしたい…何より大切なのを失うのはもう真っ平だ。



「シンありがとう…ありがとう! ……つかさ! 気を付け………」

 目を潤ませながらつかさを叱るかがみは途中で言葉を止め、一点を見つめる。

 その視線の先を見ると、そこにはつかさが先ほどまで持っていた物の変わり果てた姿だった。





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