「あーお姉ちゃん、温度、温度!」

 懸命にチョコレートを混ぜていたお姉ちゃんに、私は声を上げる。

「えっ!? あ、ああー!!!」

 わたしの言葉にお姉ちゃんは悲鳴に近い声を上げる。でもそれはあまりに遅かったの………。



「ううっ…またやり直し………」

「ごめんね、お姉ちゃん。わたしが型取ってて、気づかなくて………」

「つかさのせいじゃないって、私の不注意だし」

 お姉ちゃんは笑ってそう言うと、再びチョコをかき混ぜ始める。



「でもやっぱりつかさからやって正解だったわよね〜私から始めてたら、つかさの分出来そうになかったわよ」

「そ、そんなことないと思うけど…やっぱりわたしも手伝うよ」

「ダメよ!」

 わたしの提案にお姉ちゃんは真剣な表情で断る。

「あいつに渡すものは自分で作らないと、意味がないから」

「お姉ちゃん………、うん! そうだよね」

 普段お姉ちゃんがお菓子を作るのは、わたしが作ってる時に一緒に作る程度だけど、

今日は言葉通りお姉ちゃんは一人でチョコレートを作ってるの。

 それはお姉ちゃんがあの人に自分のチョコレートを渡したいっていう気持ちの表れ。

 わたしも負けてられない!





「できたー!!」

 何度目かの挑戦での成功にお姉ちゃんは喜びの声を上げる。

「やったね、お姉ちゃん!」

 よかったーこれで二人ともあの人にチョコを渡せるよ〜。



「さてもう遅いし、今日は寝ましょ」

「わたしは、まだ飾りつけが終わってないし…お姉ちゃん先に寝ていいよ」

「飾り付けって、もう出来てるじゃない?」

 お姉ちゃんはボールについてるチョコをなめながら、不思議そうにすでにラッピングされたわたしのチョコを見る。

「あれはこなちゃんとゆきちゃん用で…ここからがシンちゃん用」

「うっ…わたしの本命チョコは友チョコにも劣るのか………」

「そ、そんなことないよ〜愛だよ、愛が入ってればいいんだよ」

 わたしが慌てて言った言葉を聴いて、お姉ちゃんは悪戯気な笑みを浮べる。

「じゃあ、つかさのチョコには愛が詰まってないのね〜」

「えっ!? そ、そんなことないよ!」

 わたしはお姉ちゃんやこなちゃんやゆきちゃんみたいにあの人にいいところをアピールできるところが少ないし、

ダメなところが多いけど、だけど愛情だけは誰にも負けてないって思ってるよ!!



「アハハ、冗談よ、冗談。まあ、私も負けてる気はないけどね」

 はぅっ! 読まれてる!?

「私は先に寝るけど、つかさも早く寝なさいよ。体調崩して、渡せないなんて事になったら、私が許さないからね」

「うん、おやすみなさ〜い」

 お姉ちゃんなりの励まし方にわたしは手を振って、お姉ちゃんを見送る。

「よーし、がんばるぞー!!」

 結局わたしはお母さんが起きてくるまで、飾り付けをしていたの………。





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