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「しまった! 鞄教室に忘れてきた………」
その事に気付いたのは学校を飛び出してしばらくの事だった。
だけど今更教室に戻るのは恥ずかしいし、カッコ悪すぎる………。
確かに今回はオレの目が節穴だったのは認める。
つかさには謝らないといけないし、あんなに美味しいものを作ってくれたんだから、お礼も言いたい。
分かってる、それは分かってるんだけど………。
「あ〜オレはなんであんな子供みたいなことをしたんだー!?」
オレは改めてさっきの自分のとった行動を思い出し、頭をかきむしる。
なんとかつかさだけに会う方法はないのか?
「そうだ! 携帯で………」
そこでオレの言葉は止まる。つかさの番号をオレは知らないんだ………。
つかさと話すことなんて滅多になかったし、いざとなったらかがみを通して話がつくだろうと思っていたんだけど………
「まさか必要になるとはな………」
オレは溜め息を付いて歩き始める。
今は、秋風がオレの頭を冷やしてくれることを祈るばかりだ。
とはいえそんな簡単に良い案が閃くはずもなく、夕方になってもオレは未だ商店街をブラブラしていた。
「……ん? ……マズイ!!」
オレは見知った顔を見つけ、慌てて角に身を隠した。
そうだよな。この商店街と柊家は目と鼻の先だもんな。迂闊だった………
『おやつかさちゃん、今日はかがみちゃんと一緒じゃないのかい?』
『はい。お姉ちゃんは神社の方のお手伝いに………』
どうやらつかさとお婆さんは顔馴染みらしく立ち話をし始めた。
……ってなんでオレは隠れたんだ? それになんか周りの目が痛いんだけど………。
『――だったらわたしが持ちますね』
『うーんじゃあ、バス停までお願い出来るかね〜』
オレが何やら考えてる内に2人の会話は進み、つかさがお婆さんの荷物を持ち上げる。
だがお婆さんの荷物は見た目以上に重かったらしく、つかさの足下がふらつく。
そして………
『あっ!――』
つかさは後ろにバランスを崩す。
「チッ!!!」
オレは舌打ちと同時に、角から飛び出した。