「――というわけでそうなったから、頑張りなさいよ! つかさ!」

「ええええええー!?」

 お姉ちゃんからわたしたちが帰った後の話を聞いて、わたしは驚きの声を上げる。



「いいじゃない、シンの鼻を明かせるチャンスなのよ!」

「だ、だって、アスカくんの言ってることはあってるし………」

「何言ってんの!? あんたどこまでお人好しなの!?」

 お姉ちゃんは凄い剣幕でわたしに詰め寄ってくる。

「あいつはつかさの事を馬鹿にしたのよ!? 大してつかさの事も知らないのに!!」

 まるで自分の事のみたいに怒るお姉ちゃんの迫力に押されて、わたしはただ頷くしか出来なかったの。

「……それに私の大事な人の事あいつにも知って欲しいし………」

「えっ?」

「な、なんでもないわよ! というわけだから分かった?」

「う、うん。それでいつなのその日?」

「明日のお弁当」

「ええええええー!?」

 お姉ちゃんの答えを聞いて、わたしはまたまた大きな声を出しちゃったの………。





『私達が帰ってからそんなことがあったのですか………』

「うん………。

 ゆきちゃん、アスカくんの好物知らない?」

『すみません、そこまでは………』

 受話器越しにゆきちゃんが申し訳なさそうに返してくる。

『ですがつかささんの作るお料理は美味しいので、きっとシンさんはつかささんの事をお褒めになられると思いますよ』

「そ、そうかな?」

『はい! 自信を持ってください』

「ありがとう、ゆきちゃん」

 そうだよね! 一生懸命作ったら大丈夫だよね。

 よーし、頑張っちゃお!!



『ですが、さすが泉さんですね。

 つかささんとシンさんの共通の話題である料理を選ばれるなんて』

「えっ? どういうこと?」

『シンさんもつかささんと一緒で料理を作られるのはお好きなようですよ』

「えーぇぇぇぇ!?」

 わたしはもう少しで大きな声を上げるとこだったの。

 好きってことは、アスカくんのことだからきっと物凄く上手だよね…どうしよう………。

 わたしの料理が美味しくないって怒っちゃうかな………?

『これを機会にシンさんと仲良くなれると良いですね』

 ゆきちゃんはわたしの動揺に気付かず、いつもみたいに優しい言葉をかけてくれる。

「う、うん…そ、そうだね…ありがとう………」

 わたしは姿が見えないゆきちゃんに無理矢理な笑みを作って、電話を切ったの。





 アスカくんを怒らせたら、本当にわたし一人になっちゃうよ…どうしたらいいんだろ………。

「……取りあえず、明日は早く起きないといけないからもう寝よ」

 難しいことは寝・逃・げでリセット! …根本的な解決になってないけど、でもそんなの―――

「関係あるよー………」

 わたしはすごく重い足取りで自分の部屋に戻ったの………。





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