『食わず嫌い』 11
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「ふ、ふぇっ!?」
オレの怒りにつかさは今にも泣き出しそうな声を上げた。
「『ふぇっ?』じゃない!! アンタ、なんでさっき受け身を取ろうとしなかったんだ!?」
「わ、わたし受け身なんて、と、取れないから………」
「受け身ってのはある程度は本能的に取れるんだよ!!」
それなのにさっきつかさは荷物を離そうとしなかった。
「そうなんだ〜」
感心した様子でオレを見るつかさ…コイツ、分かってないのか?
「あのまま後頭部から落ちてたら一大事だったんだぞ!! それで心配するのは誰だと思ってるんだ!?」
姉であるかがみや家族、その他にも親友であるこなたやみゆきも、きっと心配するはずだ。コイツはそんな事も分からないのか?
「あっ! ……そうだよね…ごめんなさい………」
「……まあ、分かればいいけど」
さすがにしゅんとなってる人間をこれ以上責める訳にもいかないので、オレも矛を納める。
「本当にごめんなさい………。
でも良かったね、お婆ちゃんが喜んでくれて」
そう言うとつかさは少しだけ笑った。
「ハァ!?」
つかさの予想外の言葉にオレは声を上げる。
「だ、だって、他の人からの笑顔見られたら、嬉しくならない?」
「……それでお前が危ない目にあってもか?」
「えっ? えーとね…痛いのは嫌だけど…やっぱり嬉しいよ」
つかさは少し困った顔をしながらも笑みを見せる。
人を救うには無傷というわけにはいかない。それでもオレは戦ってきた。
戦う事でオレみたいなヤツを出さないために。
そんなオレからしたらつかさの言葉は平和ボケ以外の何物でもない発言だ。
だけど、この世界は概ね平和で、明日が来るのを不安で生きてるヤツなんて少ない。
だからこんな優しそうに笑えるんだ。
バカにする気は不思議と起きなかった。オレが望んでいた笑みがそこにあるから………。
つかさの笑みは、さっきまで自分が怒っていた事すら忘れそうな笑みだ。
こなたはこれをオレに教えるために今回の事を仕組んだのか?
悔しいが、アンタのその企みに乗ってやるさ!!