「……久しぶりだ、走馬燈が見える………」

 電車内で生気のない瞳で、呟くシンちゃん。

 結局シンちゃんはわたしたちの残したケーキを全部平らげたの。

 だから追加料金はとられなかったけど、ちょっと気が晴れない。

 でもシンちゃんには本当に感謝。



「あ、あの、ありがとう、シンちゃん」

「もういい、これに懲りてくれたら」

「そ、そうね、そうするわ」

「反省」

 さすがのお姉ちゃんもこなちゃんもいつもの元気がない。

 みんなくたくた。



「シンちゃん」

「ん?」

 それでもわたしは一つだけシンちゃんに聞きたいことがあったの



「さっき言ってた借りってなに?」

 わたしはシンちゃんにそんなことをしていない。というよりも迷惑を掛けてる気がする

「ああ、あれな」

 そうしてシンちゃんは未だに苦しそうに額を抑えてから、わたし、そしてお姉ちゃんを見つめる。

 その時のシンちゃんの瞳は生気が戻っていたの。



「妹に勉強を教えてた姉を、その妹の前で馬鹿にしちゃったからな」

「えっ?」

「ごめんなかがみ、知らなかったとはいえ妹の前で」

「そ、そんな、別に私は気にしてないわよ、全然!」

「つかさもごめん、尊敬してる姉さんを馬鹿にして」

「えっ、あっ、ううん………、わたしも気にしてないよ」

 こなちゃんに聞いたけど、シンちゃんは妹さんを少し前に亡くしたんだって………。

 だからそういう兄弟のことには敏感なんだって。



 でもシンちゃんが思ってるみたいに、お姉ちゃんは思ってないよ

 きっとさっきのお姉ちゃんの言葉どおり

 だってお姉ちゃんとシンちゃんとは喧嘩するくらいに仲が良いから





戻る   別の日常を見る   進める