「はぁ〜生きてるんだな〜オレ」

 シンちゃんはわたしの胸に埋まりながら、気の抜けた声を出す。

 社会人になってからシンちゃんはわたしに会ったらまずこれをする。

 シンちゃんが言うには、これが一番癒されるんだって!

 もちろんわたしもシンちゃんの力になれるし大歓迎!

 それにね、この時のシンちゃんはすっごく可愛いんだよ! 思わずぎゅってしちゃうんだよ!



「よし、充電完了!」

 少ししてからシンちゃんは顔を上げる。

 言葉通りその顔はさっきとは別人みたい。

 気が強くて真っ直ぐな赤い目に、眩しいくらいの輝きが戻ってた。



「えへへ、おそまつさまでしたー」

「ああ、相変わらず慎ましい胸だったぞ」

「シ、シンちゃん!?」

 ううっー気にしてるのに〜!!

 双子なのにお姉ちゃんはちゃんと胸が成長してるのに、わたしは全然大きくならないんだよ、不公平だよ〜!



「ばか〜! シンちゃんのばかー!!」

「はは、わるいわるい」

 シンちゃんはわたしが振り回すバッグを、後ろに飛びながら涼しい顔をして上手に避ける。

 それでわたしも少しだけムキになって振り回す。

 でもこんなことを五分もしちゃうと



「はぁ、はぁ、はぁ、もうだめ〜」

 へばるわたし、もちろんシンちゃんにはかすりもしない。(当てる気なんて全然ないけどね)

「なんだ、だらしないな」

 肩で息するわたしをシンちゃんは笑って見てる。



「んっ」

 でもすぐに手を出してくれる。

 あれだけのことしといて〜、ほんとずるいよねー

「その、なんだ、今日も、っていうか今日のつかさは一段と可愛いな」

 手を繋ごうとする直前に素敵な笑顔でそんなこと言われて、わたしは全身を真っ赤にして固まっちゃったの。



 完全に今のは不意打ち

 全然予想してなかった



「ほら行くぞ」

 そんなボーっとしてるわたしをシンちゃんは手で掴んで、引っ張っていく。

 もちろん痛くなく、優しく。



 ほんと、ずるい





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