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世間ではクリスマス、だが社会人にはそんなのは関係ない、はずなのだが………。
「おつかれー、お先」
「おつかれー」
「お疲れ様です」
オレの今いるフロアには、さっき帰った人も含めて数人しかいない。
理由は簡単だ。今日がクリスマスだからだ。
オレが入った会社は完全至上主義のところだった。
要するにノルマ以上の事をすれば早帰り、休暇を取ろうが文句は出ない。
変わりに人の入れ替わりも激しいし。おまけに給料は出来高払いときた。
ただオレはこの会社が肌に合っていた。
実力主義からか社風とか上下関係とかはめちゃくちゃ緩く、そういうのが苦手なオレは助かってるし、
幸いにしてオレはプログラムといった機械工学系統は世界屈指の知識と腕がある。
言っとくけど世界屈指は比喩じゃない。
まあその知識とかは今の世界で身に付けたものじゃないのがほとんどだけどな。
「お前は予定とかないのか? 可愛い彼女がいたんじゃなかったけ?」
もはやフロアには俺と2人しかいないため、先輩の社員が完全にくつろぎモードでオレに聞いてくる。
ちなみに可愛い彼女とは説明するまでもないがつかさの事だ。
そして当然今日は予定がある。
「まだ約束まで時間がありますし、もう少しでキリがいいんで」
「お前さあー最近張りハリキリじゃね? 来春からはお前主導のプロジェクトも始まるんだしさ、今頑張ってるとしんどいぜ?」
「いえ、今は少しでもお金が欲しいんで」
「意外だな」
日頃のオレが金に執着していないのを知ってるから、先輩は軽く驚きの目でこっちを見る。
もっともこれは単にお金が欲しいという理由からではない。
「来年からは家族がもう1人出来る予定なんで、その資金作りです」
「ああ、そういう事か。おめっとさん
5万だったか、包むの?」
先輩はオレの肩を叩くと、ニヤ付きながらコーヒーを取りに出て行った。