『聖なる夜』
1
「おーやってるわね」
「クリスマスデートですか、毎年飽きもせずに」
わたしがお姉ちゃんに服のチェックをしてもらっていると、いのりお姉ちゃんとまつりお姉ちゃんが部屋に入ってきたの。
「はい、そこの二人、冷やかしなら帰る、帰る」
「そう邪険にしないでよ、かがみ。うん、つかさ可愛いわよ」
「ありがとーいのりお姉ちゃん」
「ところでつかさーシン君と付き合ってもう何年目になるんだっけ?」
「え〜とねー…五年目だよ」
まつりお姉ちゃんの質問にわたしは指を折って数える。
わたしとシンちゃんが付き合いだしたのは高校を卒業してから。
お互い進路も違ってシンちゃんが大学に通ってる時も中々会えなかったけど、
シンちゃん働き出してからはますます会えてないの。
だからわたしは今日は嬉しくて、いつも以上に気合も入ってる!
「さすが五年目ともなると、つかさも落ち着いてるわねー」
「そりゃそうよ、今更恋人の行動に一喜一憂してられないわよ、ねぇつかさ?」
「え、ええと………」
わたしの気合は周りの人に全く伝わってないみたい…しかも未だにシンちゃんの行動に一喜一憂しちゃってます………。
あっ、でも喜びの方が圧倒的に多いな〜
「姉さん達、もはやそんな茶化しも終わりよ
これを見なさい」
わたしではなく、お姉ちゃんが今日のわたしたちが行く予定のレストランのパンフレットを誇らしげにお姉ちゃん達に見せる。
「いのり姉さん、こ、ここって………」
「都内でも屈指の高級レストランじゃない!?」
「もちろん、シンの予約。しかも今日シンはつかさに大事な話があるそうです」
『な、何ーっ!?』
その言葉と一緒に、がっくりと膝を付くいのりお姉ちゃんとまつりお姉ちゃん。
「姉さんークリスマスケーキどうだったけ?」
「たしかー駅前で予約してたんじゃなかったけ?」
虚ろな表情でぶつぶつと呟き、ふらつきながら部屋を出て行くお姉ちゃんたち。
その姿はお姉ちゃんがよくやってる、銃で撃つゲームの敵みたい。
どうでもいいけど、あれって物凄く怖くない?
「お姉ちゃんたち大丈夫かな?」
「ああ〜いいのよ、ほっといたら。クリスマスケーキ余分に食べてくれるし助かるわ」
「あははー、そういえばシンちゃんの大事な話ってなんなんだろうね〜?」
わたしの言葉にお姉ちゃんは目を見開く。そしてなぜか溜め息。
この溜め息は高校時代からシンちゃんが鈍い態度をした時に、お姉ちゃんがよくしていたもの。
「あんたも大概ねー」
「えっ? えっ?」
お姉ちゃんがなんで呆れてるのか、この時のわたしには全然分からなかったの。