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別にここに来たらさっきの言葉を言おうと決めていたわけじゃない。
気付いたらそんな言葉が出ていた。つかさと離れたくない、その一心で。
そして今オレはつかさと手を繋いで歩いてる。完全に誤算だ。
勿論嬉しい誤算だけど。
こんなに早くつかさの温かさを感じれるなんて
「きゃっ!?」
恐らく人とぶつかったのだろう、つかさが小さな悲鳴を上げる。
当然人とはぶつからないようにオレもエスコートしているけど、
こんなに多くの人が無秩序に行動してるんだから、ここを当たらずに行くのは難しい。
それにオレは直撃を食らわなければ、問題ないというのがMSに乗ってる時からの基本スタイルだから、
どっかの誰かみたいに完全回避というのが苦手だ。
そんなわけですぐに脳内でダメージコントロールをシミュレート。
つかさがバランスを崩して体重を掛けてくるであろう右手に力を込める。
「はうっ!?」
ところが、やはり実戦はシミュレート通りに行かないのが相場なのか、つかさが予想外の動きをして
「はううう!」
「うっ!」
ぎゅうううううってされただと!?
もう少し説明すると、つかさがバランスを崩して手を繋ぐというバージョンから、
オレの手に抱きついてくるというバージョンにアップしたのだ。
「ご、ごめんね」
涙目&上目遣い、そして手には、小さいがつかさの形の良い『アレ』が当たっている。
演習ではこんなっ!
完全にオレの予想を超えた展開だ、このままだと色々とヤバイ!
「つ、つ、つかさ! あそこだ! あのショップに入ろうぜ!!」
「ふぇっ? 目的地は別なんじゃ………?」
今回ばかりはつかさの答えを聞いていない。というより聞いている余裕がない。
このままだと間違いなく種割れならぬ、理性が割れる。
オレは足を早目、予定とは違うショップへと向った。
もちろんつかさに手を抱きつかれたまま。