わたしたちの初デートは若者の町で有名な都内某所。

 今日はここで服を買うんだよ!

 可愛くてわたしに似合う服が見つかりますように



「うわーやっぱり人がいっぱいだね〜」

 駅から出た瞬間からすでに見える人の波にわたしは圧倒される。

 人の多さには自分の家の初詣でなれてるんだけどやっぱりここは凄い、平日でも凄い人。



「見て見てシンちゃん、ハチ公、ハチ公!」

「初めてじゃないんだろ?」

「うん、でもやっぱりハチ公前で待ち合わせって憧れだよ〜」

 ドラマでは主人公と恋人が、ここで待ち合わせっていうシーンを見ては想像を膨らましてた。

 わたしもここで大好きな人と待ち合わせできたらって………



「じゃあ、近いうちにやろうぜ、あそこで待ち合わせ」

 シンちゃんはハチ公像を指差しながら、優しい笑みを浮かべわたしの頭をなでてくる。



 ふしぎ



 シンちゃんが来る前はあんなに緊張してたのに、もう今はそんなのがなくて気分はウキウキ、心はランラン。

 こうやってシンちゃんに頭をなでられると、落ち着くんだけど、すっごく嬉しくなっちゃう。

 シンちゃんの手は魔法の手。



 涙を吹き飛ばして、笑顔にしてくれる。

 わたしを守ったり、幸せにしてくれたりする。

 でも時々魔法が暴走して女の子の胸を掴んじゃうんだよ〜。

「シンちゃんのエッチ!」

「ハァ!?」

 わたしは軽くシンちゃんを叩く。

 シンちゃんは小声で『心が読まれたのか?』とよく分かんないことを言って首を捻った。



「とにかくだ。オレ達の目的は駅前じゃない。あの人の波を越えた先だ」

「うん」

「だから」

 そして、シンちゃんは手をわたしの方に差し出す。

「オレの手を離すな。バラバラに歩いたら、つかさなんて一瞬で迷子だ」

 意地悪なことを言うシンちゃん。でも、それ当たってる。

 わたし一人だったらずっと目的地につけなさそう。

 でも今のわたしは一人じゃないもんね!

「うん!」



 だからわたしは魔法の手をしっかりと握った。





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