入ったところはアクセサリーショップ。



「せっかくだし、少し見ていくか?」

 わたしは頷く前にショーケースへと走り寄る。

 うわ〜可愛いイヤリングとかネックレスとかリングとか、いっぱい!

 こういうのって見てるだけでも楽しいよね?



「つかさ、それが欲しいのか?」

「えっ?」

 気が付くとわたしは一つのネックレスに夢中になっていたの。

 チェーンの部分がメタリックな赤、ヘッドのデザインは天使の羽、だけど色はまるで堕天使のように黒で輝いてた。

「あはは〜高いね、困っちゃたね」

 わたしは値札を見たままの感想を言う。

 ちなみにお値段はわたしの予算の七割、これを買っちゃうとお洋服が買えなくなっちゃうから諦めるしかない。

 こればっかりはしょうがないよね。



「すみません、これ下さい」

「えっ!?」

 シンちゃんわたし買わないよ?

 それともシンちゃんが買うの?



「あっ、これです、これ」

 わたしがシンちゃんの言葉に呆気に取られてる間にも、シンちゃんは店員さんを呼んでついにお会計まで済ませちゃった。

「包装はいいです」



 そしてシンちゃんはその買ったネックレスを持って、わたしの後ろに廻る。

 そして目の前に垂らされる堕天使の羽。

「ふぇっ!? なんで!? どうして!?」

「プレゼントに決まってるだろ?」

「な、なんの? 誕生日じゃないよ?」

「今日はホワイトデー、それと初デート記念」

 シンちゃんは片目を瞑ってそう答えると、ネックレスをわたしの首に付ける動作に掛かる。

「で、でも、こんなに高いもの………」

「何言ってんだ、つかさがくれたチョコは時価、これなんかとは比べ物にならない高さだぜ」

「そ、そんな〜それにお、お店の中だよ?」

 わたしのチョコレートを時価って言ってくれるのは、嬉しいけど…ちらっと店員さんを見ると苦笑いしてた。

 なんとなく視線が生暖かい、気がする。



「よし付けれたぞ」

「あ、あ、ありがとう〜!」



 このプレゼントは絶対になくさない



 わたしは堕天使の羽にそう誓ったの。





「でも、意外だな」

「なにが?」

 ショップを出るとシンちゃんが人の波を見ながら、聞いてくる。

 人の波はさっきよりもほんの少しだけ少なくなってた。

「つかさってこの手の色好きだったけ? 今日も格好を黒と赤でまとめてるし」



 もうほんとに遅いよ、いまさらそんなことに気付くなんて〜。



 今日これを選んだのは少しでも大人っぽく見せるためと

「うん、最近この色が好きになってね」

「なんだなんだ、また得意の新しいもの好きか?」

「えへへ」

 シンちゃんは呆れつつ、わたしの頭を少し乱暴になでる



 でも、多分この色は『白』と一緒でずっと好きな色だと思うよ?

 だって『黒』と『赤』はわたしの大好きな人をイメージできる色だから。



 その大好きな人はわたしの隣で小さな声で『目標達成』、って言ってガッツポーズしていた。

 今の様子、すっごく子供っぽ〜い。

 普段は大人だから、余計にそう見えるのかな? でもそんなところも好き、大好き。



「よし、行くか!」

「うん!」

 わたしはさっきと同じでシンちゃんの右手に体全体を巻きつかせる。

 シンちゃんは少し驚いたみたいだったけど、肩をすくめるとわたしに合わせてるのか、ゆっくりと歩きだした。





 初デートはまだまだこれからです





〜 F i n 〜   






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