わたしたち二人は校門をくぐる。

 後何回ここを通るのかな?

 もう一ヶ月も待たずにわたしたちはこの陵桜高校を卒業する。



 でもどうか、みんなと、あの人とずっと一緒にいられますように



「何してんの、行くわよ?」

 お姉ちゃんの言葉にわたしは心の中のお祈りをして、再び歩き出した。





「あれ?」

 いつもみたいに靴箱に手を入れると、靴以外になにか入ってることに気付いた。

 それも一つだけじゃないみたい

 なんだろ?

 わたしは靴箱を覗き込む。 

 そして



「お、お、ね、ね、姉ちゃ〜ん!!」

「どうしたの!? なんか変なもんでも入ってたの!?」

 わたしの悲鳴にお姉ちゃんが飛んでくる。

「……こ、これ………」

 震えながらわたしは靴箱に入っていたものをお姉ちゃんに見せる。

「こ、これは!?」

 お姉ちゃんが驚愕の声を上げたの。





「ラブレターよね。完全に」

 教室に向う途中でお姉ちゃんは便箋の一枚をしげしげと見つめる。

「な、なにかの間違いかな?」

「二人とも? それはありえないでしょ?」

 お姉ちゃんはわたしが持っている残りの便箋を指す。

 なぜかはわからないけど、わたしの靴箱には二枚の便箋が入ってたの。

 しかも差出人は二人とも同じクラスの男子。

「で? そっちのもあいつとは違うの?」

「う、うん、当たり前といえばそうなんだけどね………」

 わたしは少し困った顔をしながら頷く。



 わたしはすでに大好きな人がいる。それもずっと前から。

 未だにあの人に会うと胸がどきどきする。

 だから告白なんて夢のまた夢。

 今は仲のいい友達だけどいつかは、って、そんなことを思ってる。

 だからもしこれが本当にラブレターとしてもわたしはこの人たちの想いに答えられない。

 自分の心をもう二度と偽りたくないから。





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