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「単純」
今度は自分に向ける。
メールだから当然手書き文字見たいに癖のない読みやすいものだ。
それなのにそいつの嘘偽りのないオレを嫌っていないという感情が、そこから伝わってきた。
そしてそれだけでオレの心は平穏を取り戻す。
『そっちこそいつまでもビービー泣いてたら、皆に迷惑だろうからな
明日には笑っておけよ』
オレはまるで目の前にそいつがいて、喋る様にメールに感情を乗せる。
そして送るとオレは歩き出す。
やっぱりオレはそいつの事が
愛おしい
守りたい
側にいてほしい
「……どうしろってんだよ」
本当はどうしたいのか分かってる
ただ結論を先延ばしにしてるだけ
たった1つの理由がそうさせる
オレのこの手で本当にそいつを抱きしめていいのか?
このたった1つの疑惑がオレから決断力を奪っていく。
このままの関係が一番じゃないのか。
そいつとは今の関係でいられるんじゃないか、それが不満なのか?
メールの着信音が鳴り響く。
律儀にもそいつがメールを返してくれたんだろう。
「不満なんだよ」
オレはもう1人の『オレ』に答えると、再び駅までの道を歩き始めた。