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最初はその笑顔を守ろうと思っていた。
でもいつからかその笑顔にオレは守られてると知った。
そしてオレはその笑顔をずっとずっと側で見ていたいと願うようになっていた。
そいつからすれば、笑顔で誰にでも優しくするのは当たり前の事だろう。
きっとオレのことも異性の友達程度にしか、見てはいないんだろう。
今年に入って何度か2人っきりで遊びに行ったのに、あっちはただ楽しそうにしているだけだった。
オレはというとその姿に魅了されっぱなしだったんだけどな………
そんな鈍いそいつには直接言わないとダメなんだろう。
……でも、もしフラレたら………?
きっとあいつは泣きながら、謝るだろう。
でもそんなことオレは何1つ望んでいない。
何よりそいつを泣かせないってもう決めたんだ。全てを話した、あの時に………
「何がスーパーエースだよ!」
原型を留めていない缶をオレはゴミ箱に叩きつける。
そいつにラブレター送ったやつらよりオレは情けない。何もしていない。
それどころかさっきのあの態度からオレは、そいつを恐れさせたかもしれない、そいつに嫌われたかもしれない。
デフレスパイラルに陥りそうなオレを救ったのは、鞄の中から聞こえるかすかな音だった。
オレは鞄の中から原因の主であった携帯を取り出す。
小さなディスプレイにはメールを受信したことが映し出されていた。
「お人好し」
自分で口から笑みがこぼれているのが分かった。
メールには悩み事の事、その後のそいつの煮え切らない態度の事についての謝りの文字が打たれていた。
そして最後の一行に、明日もよろしくという主旨の事が打たれていた。