16


「昨日はびっくりしたよ〜」

 高校生活最後の制服をわたしにしてはテキパキと着る。

 昨日わたしが卒業式にあの人を呼び出すためにメールを打とうとしてたら、あの人からメールが着たの。

 メールには場所と時間、そして『話したいことがある』、それだけが打たれてた。



「なんだろ?」

 あの人がなにを話すかは全然わからないけど、あの人から誘ってくれてラッキー! ……じゃないよね………

 わたしはあの人にメールを打とうか、どうしようか五時間も考えたの。でも、結局打てなかった。

 ほんとわたしって意気地がない。お姉ちゃんだったらきっと簡単に打てたんだろうな………



「いけない、いけない」

 今はみんなと比べたらダメだよ! 今日はわたしだけのことなんだから



 わたしは引き出しから箱を取り出す。

 中身は黒で白の水玉がストラップされているリボン。

 半年くらい前にもらったんだけど、まだ一回も付けてない。

「こんなに早く使うなんて思ってなかったよ」



 わたしは一人じゃなんにもできない。お姉ちゃんやこなちゃんやゆきちゃん、そしてあの人にいつも助けてもらってる。

 そんなわたしでもあの人の側にいたい、ずっと隣で、ずっと一緒に



 わたしはリボンを丁寧に出して掲げる。これはあの人にもらったもの

 これを付ければあの人が力を貸してくれそうな気がするの



 だからお願い、わたしに勇気を貸してください





戻る   別の日常を見る   進む